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「バーチャル富岳」とは

「バーチャル富岳」とは、「富岳」以外のスパコンやクラウドサービス上に、「富岳」と同等のソフトウェア環境を再現するものです。

「富岳」が様々な成果を上げ続けているのは、ハードウェアが優れているだけでなく、設計段階から時間をかけて様々なソフトウェアを整備してきたことで、利用者に使いやすい環境を提供できているからです。すでに「富岳」で実績のあるソフトウェア群をパッケージ化し、それを普段使っているコンピュータにワンタッチでインストールすることができれば、即席「富岳」ができあがるという算段です。世界的な研究を支える基盤を、自らの手元ですぐに再現できるとすると、科学技術の進展はさらに大きく飛躍するでしょう。

「富岳」のリッチなソフトウェア環境を「世界中で」「誰でも」使えることを目指す

R-CCSでは「バーチャル富岳」を実現するため、HPCソフトウェアのデファクトスタンダードとして、さまざまなアプリケーションを開発・実行可能なソフトウェアスタックを構築中です。この標準ソフトウェアスタックを世界中のスーパーコンピュータ・センターが採用することにより、「富岳」や「バーチャル富岳」でアプリケーションを開発すると、どのスパコン・センターでも同時に利用可能となるという画期的なプラットフォーム戦略です。「バーチャル富岳」は、いわば、スパコンにおける iOS や Android、WindowsOS のようなものです。iOS を搭載したスマートフォンやタブレット、さらに PC では、どのデバイスでも同じアプリを同じ操作方法で使うことできます。アプリストアで検索すると、さまざまなアプリケーションを見つけることができ、ワンタッチでインストールすることができます。「バーチャル富岳」は、スパコンでこのような世界を現実のものにします。

なぜ「バーチャル富岳」に取り組むのか?

「富岳」は2021年3月に正式運用を開始以来、数多くの科学的成果に加えて社会課題の解決にも大いに役立っています。多くの利用者から「使いやすいスパコン」という評価を得ているとともに、利用者も大変増えており、利用にあたっての競争が激化している状況にあります。この「富岳」の価値をより有効活用しようと我々が取り組んでいるのが、「バーチャル富岳」なる新たな選択肢を利用者に提供することです。今までスパコンは、大変な労力や時間をかけて個別のスパコンの環境に習熟しなければ、使いこなせないという問題がありました。せっかく習得したとしても、別のスパコンを利用するには一から覚えなおさねばならない、不便さが付きまとっていたのです。また、スパコンを提供する側も、システム更新の度にゼロからソフトウェアの整備をやり直さなければならず、大変な手間や投資が必要でした。「バーチャル富岳」は、スパコンの利用者が共通の環境でアプリを作成、活用することを可能とするものであり、これによって上述した長年のスパコンの問題点を解決しようという取り組みです。自由度、秘匿性、迅速性などの観点から「バーチャル富岳」の方が「富岳」よりも有利な場面も出てくるでしょうし、「富岳」と「バーチャル富岳」とをうまく使い分けるなどして、今までよりも選択肢が広がることは、とくに産業界のスパコン利用者にとっては利便性が高いものと期待できます。

現状

このような「バーチャル富岳」の構築に向け、まず「富岳」の CPU と互換性のある Arm アーキテクチャベースの CPU の AWS Graviton を用いたクラウドサービスを提供するアマゾン・ウェブ・サービス(AWS)との間で 覚書を締結し、「富岳」上のアプリケーションを AWS 上でほぼそのまま実行できる、いわば「富岳」の機能がクラウド上に仮想的に再現されるソフトウェア環境の構築に向けた研究協力を行いました。研究協力の結果から、理研はGraviton CPUを「バーチャル富岳」の第一号のサポート対象とすることを決定し、2024年8月に「バーチャル富岳」初版のリリースを開始しました。
「バーチャル富岳」初版のソフトウェアスタックは、「富岳」で利用頻度の高いオープンソースソフトウェアを選抜しました。また、配付はSingularityコンテナイメージにて行います。AWSインスタンスを購入した方々が、このコンテナイメージをAWSへインストールすることでプライベートな「富岳」が構築できることになります。さらに、「富岳」の利用者ならば誰でも使用可能な、「バーチャル富岳」の試験・試行環境をAWSのクラウドサービス上に構築して提供します。

今後

「バーチャル富岳」は、「富岳」という現役システムの進化にあわせて、構成内容を継続的に見直していくことで、持続性のあるソフトウェア環境として維持していく予定です。構成内容を充実していくために、ぜひコンテナイメージや試験環境をご利用ください。
また、将来はArmアーキテクチャ以外のアーキテクチャにも対応していくべく、R-CCS内で今後整備予定のシステムへもバーチャル富岳の適用を試行していく予定です。

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