理化学研究所計算科学研究センター(R-CCS)は、高性能な「計算」という事象自身を「計算の科学」として探求し、それによって得られる莫大な計算パワーを様々な科学分野の問題解決に適用してそれらの発展に寄与する「計算による科学」を推進し、更には両者の高度化に貢献する他の科学分野の産物である「計算のための科学」と連携を果たすべく、次世代の「計算科学」の世界トップレベルかつ我が国の中核拠点の研究センターとして活動することを目標としています。
計算科学は過去から未来へ、またミクロからマクロへ、世の中の事象を計算として計算機の内部で再現し(デジタルツイン)、そこで様々な可能性を予測・分析することで、人類の重要な問題の解決にチャレンジすることを可能にします。例えば、現象を物理の方程式で表し、それを解くことによって現象を再現する「シミュレーション」、膨大な観測データを分析してその傾向を把握し予測に繋げる「データ科学」、データを学習し、高度な推論によって現象の本質を捉える「AI(人工知能)」などが挙げられます。スーパーコンピュータは、これら全てを数千倍から数百万倍まで時間・規模とも加速し、世の中の関心の高い多くの問題の解決に適用され、社会に革新的な進歩をもたらすことが可能で、本センターはそれらの最先端の研究を行うことを使命としています。
同時に、計算科学の進化のため研究開発される諸所の革新的技術は、IT分野全体を進化させる最先端かつ急先鋒の技術として広い影響力を伴うことが必須です。次世代のスーパーコンピュータに向けた研究開発だけではなく、量子コンピュータなどの新たな計算技術と連携する計算基盤の開発や、劇的に進化しているAIを科学研究自体に活用することで研究プロセスの加速化を目指す「AI for Science」に向けた基盤モデルの開発などのチャレンジによって得られた成果はビジネスや産業におけるITの進化にも広く貢献し、国民生活や経済の向上に役立つと期待されます。
また、私たちは科学技術、イノベーションの創出において必要不可欠なダイバーシティの推進に積極的に取り組んでいます。ジェンダー、年齢、国籍、文化的背景を問わず優れた人材が活躍できる職場環境を整備し、女性・外国人を積極的に採用するとともに、特に、女性チームリーダー(研究室主宰者)の数が少ない現状を改善するための措置として、女性限定公募などの取り組みも始めました。
私たちはITの進化を担う世界の中心的研究センターとして、国内外の諸機関と連携して先進的な取り組みに挑戦し、更なる次世代の「計算(の・による・ための)科学」に向かって研究を推進していきます。