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SC25にてR-CCSの研究者が主要な3つの賞を受賞(Best Paper Award, Best Reproducibility Advancement Award, Best Research Poster Award)
SC25にてR-CCSの研究者が主要な3つの賞を受賞(Best Paper Award, Best Reproducibility Advancement Award, Best Research Poster Award)
English2025年11月16日から21日にかけてアメリカ・セントルイスで開催された SC25, The International Conference for High Performance Computing, Networking, Storage, and Analysis で、現地時間11月20日に各賞の授賞式が行われ、理化学研究所計算科学研究センター(R-CCS)の研究者がBest Paper Award, Best Reproducibility Advancement Award *, Best Research Poster Awardという3つの主要な賞を受賞しました。
SCへの論文、ポスターの投稿は年々増えており、採択されること自体が非常に難しくなっているなか、論文で2件、ポスターで1件もの賞を獲得したことは、HPC(ハイパフォーマンス・コンピューティング、高性能計算)、AI(人工知能)、QC(量子コンピューティング)等の分野におけるR-CCSの実力を世界に示したものと言えます。
この他にも、松岡聡 センター長が同日 HPCWire Readers’ Choice Award: Outstanding Leadership in HPC を受賞するなど、R-CCS全体としてコミュニティから高い評価を受けました。
- Best Reproducibility Advancement Award: 最も透明性、再現性が高いと評価された論文、または論文が扱うソフトウェアやデータセットなど種々の成果物に対して与えられる賞。
受賞者のコメント
Best Paper Award: "ORBIT-2: Scaling Exascale Vision Foundation Models for Weather and Climate Downscaling" (Mohamed Wahibチームプリンシパルら)
この賞は、AI とエクサスケールコンピューティングが交わることで起こる大きな飛躍を称えるものです。ORBIT-2 は、基盤モデルが文字通り地球規模で動作可能であることを示し、気候のダウンスケーリング(高解像度化)を1キロメートルを切る解像度で実現することで、ビジョントランスフォーマーに長く立ちはだかっていた壁を打ち破りました。Reslim アーキテクチャと TILES 並列化手法を組み合わせることで、チームは 65,536個の GPU 上で 100 億パラメータ規模のモデルを学習し、科学的な信頼性を保ちながらエクサフロップ級の性能を達成しました。オークリッジ国立研究所(Oak Ridge National Laboratory、ORNL) と理研の協働は、AI と HPC を緊密に統合した研究が、気候レジリエンス、リスク計画、そして次世代の地球システムモデリングにダイレクトに貢献できることを示しています。
Best Reproducibility Advancement Award: "RAPTOR: Practical Numerical Profiling of Scientific Applications" (Faveo Hoerold研修生、Ivan Radanov Ivanov大学院生リサーチ・アソシエイト、Mohamed Wahibチームプリンシパル、Jens Domkeチームプリンシパルら)
高速化・高性能化を目指すAIの推進により、ハードウェアはFP4などの超低精度の実数型へ移行しつつあります。しかし、我々の高性能モデリングやシミュレーションプログラムの大半はFP64とFP32の高精度の実数型を使っているため、高精度の計算性能の削減傾向は科学の進歩を脅かしています。我々の新しいツールRAPTORは、研究者が既存プログラムを迅速に数値プロファイリングし、精度を損なわずに低精度計算の許容が可能なコード領域やメモリ領域を特定することを可能にします。Best Reproducibility Advancement Awardの受賞は、RAPTORがいかに容易に使用可能かを示しています。特に、その独創性によってRAPTORの実現を可能にした優秀な学生たちを誇りに思うとともに、チューリッヒ工科大学(ETH Zurich)、東京科学大学、イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校(UIUC)、アルゴンヌ国立研究所(ANL)の共同研究者の方々に感謝申し上げます。
Best Research Poster Award: "Time-Stepping Hamiltonian Simulation for Solving Nonlinear PDEs via a Quantum-Classical Hybrid Approach" (Sangwon Kim 特別研究員、大西順也 研究員、滝井郁人 客員研究員、坪倉誠 チームプリンシパルら)
この度はSC25においてBest Research Poster Awardを賜り、心より光栄に存じます。このような国際的に重要な役割を担う会議にて本研究をご評価いただけたことは、今後の研究活動にとって大きな励みとなります。本研究は、非線形PDEの時間発展を量子・古典ハイブリッド手法により加速する新たな枠組みを探求したものであり、次世代の大規模シミュレーションに向けた重要な一歩と考えております。本研究の遂行にあたり、貴重なコメントやご助言をくださった多くの皆様に深く感謝申し上げます。今回の受賞を励みに、研究のさらなる発展に努めてまいります。
関連リンク
(2025年11月22日)
