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真空と物質、「無」と「有」が織りなすエネルギーを統一する公式を発見 ―極小デバイス開発につながる薄膜状物質内部の基礎原理を解明―
真空と物質、「無」と「有」が織りなすエネルギーを統一する公式を発見 ―極小デバイス開発につながる薄膜状物質内部の基礎原理を解明―
2枚の金属平板を数マイクロメートル程度離して置くと平板間に微小引力が発生する現象は「カシミール効果(カシミア効果)」と呼ばれ、一見して何もないように見える真空からでも発生するエネルギー(圧力)として物理学の分野では有名です。近年ではわずかな力を精密に制御する微小デバイスへの応用が期待されています。この現象の本質は、私たちが日常的に触れている古典力学では説明することのできない、微視的世界に特有の量子力学の性質に由来するものです。
このような真空から生じる圧力(通常の意味でのカシミール効果)は絶対零度でも現れますが、室温では熱的な圧力が上乗せされるため、温度の効果(熱的なカシミール効果)を統合する理論はよく知られていました。本研究では、理論研究によって、真空から生じる圧力と熱的な圧力だけでなく、物質自体から発生する圧力(物質圧によるカシミール効果)までをも統一的に記述する基本公式を発見しました。この公式の適用例として、電子やクォークなどの「フェルミ粒子」で構成される薄膜状の物質に着目し、その内部での真空圧と物質圧の様相を記述することに成功しました。さらに、物質圧の効果によって薄膜の厚さに依存して引力・斥力が交互に出現する現象を新たに予言しました。
カシミール効果によって発生する引力は微小デバイス(MEMSなど)への応用が期待されていますが、引力だけでなく斥力をも自在に制御することは重要な課題です。本研究によって発見した原理は、薄膜状物質を用いた新たな量子技術への応用が期待されます。
本研究は、国立研究開発法人日本原子力研究開発機構(理事長 小口正範)原子力科学研究所先端基礎研究センター先端理論物理研究グループの藤井大輔博士研究員と鈴木渓研究員、国立研究開発法人理化学研究所計算科学研究センター連続系場の理論研究チームの中山勝政特別研究員からなる共同研究グループによるものです。
詳細は下記をご覧ください。
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(2025年8月29日)