宇宙空間を飛び交う放射線(宇宙線)は1912年に発見されました。地上の加速器では到底実現できないような高いエネルギーをもちますが、その生成機構は発見以来謎のままです。
九州大学大学院総合理工学研究院の松清修一教授と千葉大学国際高等研究基幹の松本洋介准教授は、太陽圏の外縁で生成されることが知られている宇宙線異常成分(この領域で生成される宇宙線を特別にこのように呼びます)の加速過程を調査しました。太陽圏とは、宇宙空間において太陽を起源とするプラズマが占める領域のことで、最低でも数百億キロメートル以上にわたって広がっているとされています。過去に唯一、太陽圏外縁の直接探査に成功したボイジャー探査機はたしかに宇宙線異常成分を観測したものの、その生成率が探査当時の理論的予測と明らかに異なるなど、宇宙線生成機構の謎は深まっていました。研究グループが注目したのは外縁領域に存在する衝撃波での粒子加速で、加速のトリガーとなる初期の加速機構がどのように発現するのかという点です。スーパーコンピュータ「富岳」を使って宇宙プラズマ衝撃波の大規模かつ高精度な第一原理計算を行い、宇宙線異常成分の種になる陽子の初期加速過程を世界で初めて解き明かしました。
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