トップページ    イベント・広報    お知らせ一覧    「富岳」を用いた30秒ごとに更新するリアルタイム数値天気予報の研究成果が2023年ゴードン・ベル賞気候モデリング部門ファイナリストに選出

計算科学研究センター(R-CCS)データ同化研究チーム 三好建正チームリーダー、複合系気候科学研究チーム 富田浩文チームリーダーらの共同研究グループによる、スーパーコンピュータ「富岳」を用いた東京オリンピック・パラリンピック期間中に実施した、30秒ごとに更新するリアルタイム数値天気予報の研究成果が、米国計算機学会のゴードン・ベル賞の気候モデリング部門の最終候補 (ファイナリスト)に選出されました。ゴードン・ベル賞は、高性能並列計算を用いた科学・技術分野の研究の中で、その年に最も顕著な成果を上げた研究グループに与えられる賞です。ゴードン・ベル賞気候モデリング部門は、気候モデリング分野および、より広い社会に与える影響とその可能性に基づいて候補が選ばれ、地球規模の気候危機の解決に向けた革新的な並列コンピューティングの貢献を表彰することを目的としています。

本研究では、2021年7月に開催された東京オリンピック・パラリンピックの期間中、スーパーコンピュータ「富岳」を使用し、30秒ごとに更新するリアルタイム数値天気予報(NWP)の実証実験を実施しました。およそ1ヶ月間で合計75,248件の予報が配信され、30分予報の解答までの時間は3分未満でした。三好チームリーダーらのビッグデータ同化(BDA)プロジェクトは、地球温暖化によって危険な雨の発生が増加するという地球規模の気候危機を解決するための一歩として、危険な雨を正確に予測する新しいNWPシステムを開発しました。高精度のリアルタイムでの30秒ごとの更新を達成するため、BDAの中核となるソフトウェアでは、500メートル解像度の気象モデルで1,000通りのアンサンブル計算を行いました。また、気象庁で使用されている従来の1時間ごとの更新システムに比べ、急速に発達するゲリラ豪雨に対しても30秒ごとの更新の有効性を明らかにしました。本研究は、複雑な気象の解明に向けて高度な計算手法を用いることの価値を証明しました。

なお、ゴードン・ベル賞の最終発表は米国コロラド州デンバーで開催される国際会議(SC23)において行われます。

図:2021年7月30日13時18分00秒(日本時間)を初期時刻とする13時33分00秒(15分先)の3次元的な降水分布の予測。色は雨の強さを示す。見やすくするために鉛直方向は3倍に引き延ばしている。国土地理院の地図データを使用した

ファイナリスト選出のコメント

データ同化研究チーム 三好建正チームリーダー

2013年10月から「京」を使って取り組み始めた研究が、2021年「富岳」を使って実を結び、この度ゴードン・ベル賞ファイナリストに選出されたことを大変嬉しく誇りに思います。この研究は、脅威が増す豪雨災害に立ち向かうため、新型センサによるビッグデータと、次世代スーパーコンピュータによるビッグシミュレーションを掛け合わせる「ビッグデータ同化」の技術革新を起こしたものです。2012年10月にデータ同化研究チームが発足し、米国メリーランド大学から神戸に研究拠点を移しました。奇しくも2012年夏に最新鋭のフェーズドアレイ気象レーダが大阪に設置され、同年9月に神戸のスーパーコンピュータ「京」が共用開始となり、何か特別な巡り合わせを感じます。

参考リンク

(2023年9月22日)