トップページ 研究活動 研究成果 ピックアップ 「富岳」が性能ランキングで世界初の4冠達成!それぞれのランキングで求められる性能とは?
「富岳」が性能ランキングで世界初の4冠達成!それぞれのランキングで求められる性能とは?
「富岳」が性能ランキングで世界初の4冠達成!それぞれのランキングで求められる性能とは?
2020年6月、理化学研究所と富士通株式会社が共同で開発しているスーパーコンピュータ「富岳」が2021年度の本格稼働を前に、早くもスパコンに関する4つの性能ランキングにおいて世界第1位を獲得しました。史上初の4冠達成です。4つの性能ランキングとは、「TOP500」、「HPCG」、「Graph500」、そして、「HPL-AI」です。
性能ランキングでは、指定されたベンチマークプログラム(評価基準となるプログラム)を使って、性能を競います。今回は、それぞれどのような性能ランキングなのかについて解説します。
「TOP500」で1位、世界最高速の証し
実利用の能力を測るために設定されたランキング「HPCG」
一方で、TOP500のLINPACKの計算がいくら速くても、実際のアプリケーションプログラムが必ずしも速いわけではない、ということが近年、指摘されています。TOP500は演算の性能が主であり、実際のアプリケーションに必要なメモリーアクセス性能が十分に反映されないためです。
そこで、2014年に新たな性能ランキングとして設定されたのが「HPCG」※2です。これは、産業利用など実際のアプリケーションで使用されている数値計算アルゴリズムを用いたプログラムをベンチマークプログラムとして採用して性能を評価するランキングです。HPCGとは「共役勾配法」といわれる数値解法を用いたプログラムで、たとえば、インフラの構造解析などに多用されています。また、HPCGでは、計算性能だけでなく、メモリーへのアクセス性能も非常に重要な評価ポイントになっています。ちなみに「京」も、2016年11月から3期連続で第1位に輝いています。
- 2 HPCG:High Performance Conjugate Gradient 疎な係数行列から構成される連立一次方程式を解く計算手法である「共役勾配法」(conjugate gradient method)を用いた新たなベンチマークプログラム。
大規模グラフの探索能力を競う「Graph500」
AIに関する計算能力を評価する「HPL-AI」
「HPL-AI」は、2019年11月にルールが公表されたばかりの最も新しいベンチマークです。ディープラーニングなど人工知能(AI)による処理性能を評価するために設定されました。今回が初めてのランキング発表となりました。
TOP500が、倍精度によりLINPACKの計算速度を競うのに対し、HPL-AIは、倍精度よりも低い精度の浮動小数点演算によってLINPACKの計算速度を競う性能ランキングです。
近年、ディープラーニングなどAIを使ったアプリケーションプログラムでは、低精度演算が用いられることから、HPL-AIのベンチマークでは、低精度演算によってLINPACKの計算速度を競うことで、間接的にAIの計算性能を評価しているのです。
使い勝手のよいスパコンを目指したことが4冠につながった
関連リンク
- TOP500(英語サイト)
- HPCG(英語サイト)
- HPL-AI(英語サイト)
- Graph500(英語サイト)
- スーパーコンピュータ「富岳」、4つのスパコンランキングで世界第1位を獲得
(2020年11月11日)