トップページ    「富岳」について    「富岳」プロジェクト沿革    新型コロナウイルスの克服に向けて(2020年4月~2021年3月)    実施している研究課題と成果    「富岳」を用いた新型コロナウイルス表面のタンパク質動的構造予測(課題代表者;理化学研究所 杉田 有治)

この課題について

新型コロナウイルスは増殖するために私たちの体の細胞に侵入する必要があります。細胞の表面にはレセプタータンパク質があります。そこへウイルスの表面にあるタンパク質が結合することで、ウイルスが細胞内に入ってきます。例えれば、ウイルスが「合鍵」を使って細胞の「鍵」を開けてしまうようなものです。この「合鍵」を使えないようにすることが、ウイルスの侵入を阻む一つの方法です。

細胞の「鍵」部分であるレセプタータンパク質は、特殊な電子顕微鏡を用いることでその立体構造が明らかになりつつあります。一方、タンパク質は動いており、常にその構造をとっているとは限らないため、どんなタイミングでウイルスの「合鍵」が結合するのかはよくわかっていません。そこで、「鍵」を作っているたくさんの原子の動きを「富岳」で計算し(分子動力学計算)、実験で観察することが難しい、タンパク質の形の変化を明らかにします。これによって、ウイルスが持つ「合鍵」との結合状態がわかり、この結合を阻む薬剤(化合物)の開発を促進することができます。

ウイルス表面のタンパク質

もっと知りたい:薬剤の候補探索とは?

参考資料


参考:コロナウイルスの増殖メカニズム

  1. 細胞表面のレセプタータンパク質にウイルスのタンパク質が結合する。
  2. 結合したウイルスが細胞に取り込まれる。
  3. ウイルスRNA(遺伝物質)が放出される。
  4. 細胞内に放出されたウイルスRNAが、コピーされると同時に細胞の機能を乗っ取り、ウイルスタンパク質を合成する。(このタンパク質合成の過程で作られたウイルスの酵素が、ほかのウイルスタンパク質の仕上げのトリミングを行う。)
  5. 生成されたウイルス粒子が細胞から放出される。