ハロー!スパコン 富岳版

第7回 未来社会みらいしゃかいと「富岳ふがく

キャラクターアイコン:レイナ

大事に育てていた鉢植はちうえの花がれちゃったの。がっかり。

キャラクターアイコン:ふがくん

水をやらなかったんじゃないの?

キャラクターアイコン:コンちゃん

水のやりぎでもれることがありますよ。

キャラクターアイコン:レイナ

どのぐらい水をやったらいいのか、天気や葉っぱの枚数まいすうわるからむずかしくって。

キャラクターアイコン:スパやん

それなら、「富岳ふがく」で計算してもらったらええやん。

キャラクターアイコン:タイチ

富岳ふがく」はそんな計算はしないと思うな。

キャラクターアイコン:えくささん

そうだね。でも、スパコンの中で野菜やさい果物くだものを育ててみることはありそうだよ。

キャラクターアイコン:ももせさん

よい農作物を育てるには、天気や農作物の状態じょうたいに合わせて、水や肥料ひりょうあたえる必要ひつようがあります。
これまで農家の人たちは、長年の経験けいかんをもとに水や肥料ひりょうりょう調節ちょうせいしていましたが、
最近さいきんは新しいやり方が広がっています。
たとえば、イチゴを育てるときに、土の中の温度、水分、肥料ひりょうりょうをセンサーではかります。
すると、そのデータからAIエーアイがどれだけの水と肥料ひりょうをやればよいかを判断はんだんしてくれるのです。
そして、必要ひつようりょうの水と肥料ひりょうが地面にかれたチューブのあなから自動的じどうてきに出てくるというしくみです。
イチゴの写真をスマホで自動的じどうてき撮影さつえいして、イチゴが病気になっているかどうかを
AIエーアイが写真から判断はんだんするという方法ほうほうも研究されています。

こうしたやり方は、第2回に出てきた病気の診断しんだんと同じように、大量たいりょうのデータとAIエーアイ利用りようするもので、いろいろな農作物に使われ始めています。しかし、未来みらいには、もっと進んだやり方が登場しそうです。

まず、ある農作物を育てるときに、水や肥料ひりょうりょう、気温、湿度しつどなどによって育ち具合ぐあいがどうわるかというデータをたくさん集め、それを全部使ってスパコンの中に畑のコピーをつくります。このコピーを使ってシミュレーションを行えば、たとえば、異常気象いじょうきしょうや農作物の病気の流行の時にその農作物の収穫量しゅうかくりょうがどれだけるかがわかります。さらに、どういう対策たいさくをとったら、どのぐらい被害ひがいるかも、シミュレーションすることでわかります。そうすれば、シミュレーションでわかった知識ちしきを使うことで、異常気象いじょうきしょうや病気の流行のときも、効果こうかのある対策たいさくをすぐにとれるというわけです。

農作物を育てるときに、異常気象いじょうきしょう人工的じんこうてきこすことはむずかしいですし、病気を流行させれば大きな被害ひがいが出てしまいますが、スパコンの中のコピーの畑なら、いろいろな条件じょうけんで農作物を育ててみることができます。さらに、自動水やり装置そうちや自動収穫装置などをつくるのにも、このようなシミュレーションは役に立ちます。コピーを使ったシミュレーションは、新しい装置そうち技術ぎじゅつを生み出すのにも力を発揮はっきするのです(第2回に出てきた自動運転もそうでしたね)。

実は、このように、「スパコンの中に現実げんじつ世界せかいのコピーをつくる→コピーを使ったシミュレーションで問題の解決法かいけつほうを見つける→その解決法かいけつほう現実げんじつ世界せかいに持ち帰ってよりよい生活を生み出す」というしくみをそなえた社会は、今、日本が目指している未来みらい社会姿すがたであり、「Societyソサエティ 5.0」と名付なづけられています。Societyソサエティ 5.0を実現じつげんするには、畑だけでなく、病院、学校、工場、道路など、現実げんじつ世界せかいをすべてスパコンの中につくる必要ひつようがあります。そのために、あらゆるものにセンサーがつけられ、「それがどこにあって、どんな状態じょうたいなのか」という情報じょうほうが、インターネットを通じてすべて集められます。そして、集まった膨大ぼうだいなデータをもとに現実世界げんじつせかいのコピーがつくられ、シミュレーションに使われるのです。

そんなことがほんとうにできるのでしょうか? 実は、「富岳ふがく」はそれをかめるために使われることになっています。ただし、現実世界げんじつせかいをまるごとコピーするには、「富岳ふがく」のようなスパコンが何台あっても足りません。ですから、「富岳ふがく」の中に小さな町のコピーをつくり、そこで道路の具合ぐあい、発電所でつくる必要ひつようがある電気のりょうなどをシミュレーションして、現実世界げんじつせかいの問題を解決かいけつできるのかを調べる予定です(図1)。

富岳ふがく」は計算能力のうりょくが高い上に、データ科学とAIエーアイを組み合わせて使う計算も、シミュレーションも得意とくいなので、この仕事にはぴったりです。きっと「富岳ふがく」が、Societyソサエティ 5.0の実現じつげんを早めてくれることでしょう。

図1 Society 5.0のしくみ

図1 「富岳ふがく」とSocietyソサエティ 5.0
Societyソサエティ 5.0では、現実世界げんじつせかい(「フィジカルワールド」とぶ)のデータを使って、現実世界げんじつせかいのコピー(「サイバーワールド」とぶ)をつくり、コピーの中でシミュレーションを行って現実世界げんじつせかいこる問題の解決方法かいけつほうほうさがし出す。このしくみがちゃんとはたらくかどうかを調べることは、「富岳ふがく」の大きな使命の1つである。実際じっさいには、「富岳ふがく」の中に小さな町のコピーをつくり、気象きしょう医療いりょう、交通など様々な分野の問題の解決方法かいけつほうほうさがすことをこころみる。「富岳ふがく」でよい結果けっかが出れば、Societyソサエティ 5.0の実現じつげんが近づく。

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