ハロー!スパコン 富岳版

第3回 スーパーコンピュータ「けい

キャラクターアイコン:レイナ

計算科学研究センターには、「富岳ふがく」の前は「けい」っていうスパコンがあったんだよね。

キャラクターアイコン:京太郎

えっへん。2011年にはTOPトップ500で世界一を2回つづけてとったんだよ。

キャラクターアイコン:ふがくん

2019年まではたらいていたんだよね。おつかれ様。

キャラクターアイコン:スパやん

どんな仕事してたん?

キャラクターアイコン:えくささん

けい」はいろいろな計算ができるスパコンで、シミュレーションが得意だったんだよ。

キャラクターアイコン:京太郎

宇宙うちゅうのナゾの解明かいめいから、車の設計せっけいまで、たくさんの計算をして結果けっかを出し、みんなからほめられたんだ。ちょっとれちゃうな。

キャラクターアイコン:ももせさん

けい」(図1)は、8万個以上こいじょうものCPUに計算を分担ぶんたんさせることで計算を速く行うスパコンです。
一部のCPUシーピーユーを使って計算を始めたのは2011年3月31日。東日本大震災だいしんさいの20日後のことでした。
けい」の部品やケーブルは東北地方でつくられているものも多かったため、
必要ひつような部品がとどかないという困難こんなんに直面しましたが、
なんとか予定通りに計算を開始し、2011年6月には、TOPトップ500で1になりました。
その後、すべてのCPUシーピーユーを使って、世界ではじめて1秒間に1けい回の計算をすることに成功せいこうし、
11月のTOPトップ500でも1になりました。

図1 スーパーコンピュータ「京」

図1 スーパーコンピュータ「けい

しかし、この記録きろくは、まだ「けい」が完成かんせいする前に、計算能力のうりょく調しらべる中で打ち立てられたものでした。また、「けい」の目的もくてきは世界一を取ることや1秒間で1けい回の計算を達成たっせいすることだけではなく、社会の役に立つ計算や、科学の進歩のための計算をすることでした。そこで、実際じっさいの計算に使うソフトウェアがちゃんとはたらくように準備じゅんびが進められ、2012年6月にスパコン全体が完成かんせいしました。そして、大勢おおぜいの研究者が「けい」を使って計算をするようになったのです。

けい」は、いろいろな分野のシミュレーションで力を発揮はっきしました。たとえば、医療いりょうの分野では、心臓しんぞうのたくさんの細胞さいぼうの中にある11の分子のはたらきにもとづいて、「けい」の中にまるごとの心臓しんぞうを再現しました(図2)。この心臓しんぞうは、心臓しんぞうの病気の治療法ちりょうほう予防法よぼうほうを研究する目的もくてきでつくられたものです。また、エネルギーの分野では、スマホなどに使われる「リチウムイオン電池」の中の原子の動きを再現さいげんし、より安全で性能せいのうのよい電池をつくるために必要ひつよう知識ちしきることができました(図3)。

図2 UT-Heart

図2 UT-Heartユーティーハート
本物と同じ動きをするヒトの心臓しんぞうを「けい」の上に再現さいげんした。
(HPCI戦略プログラム 分野1・株式会社UT-Heart研究所/協力 富士通株式会社)

図3 化学反応のシミュレーション

図3 化学反応はんのうのシミュレーション
リチウムイオン電池の中で起こる反応はんのうくわしい仕組みを明らかにした。
(物質・材料研究機構 館山佳尚、袖山慶太郎/富士フイルム株式会社 奥野幸洋、後瀉敬介)

防災ぼうさいの分野では、地球全体の大気の変化へんかを計算して、台風が発生してから日本の近くに来るまでを再現さいげんすることに成功せいこうしました(図4)。これは、台風の進路や強さを予想して、被害ひがいを少なくするのに役立つシミュレーションです。また、ものづくりの分野では、自動車が走るときの車体のまわりの空気の流れを非常ひじょうに詳しく再現さいげんできました(図5)。空気抵抗ていこうの少ない自動車を設計せっけいするのに役立つ結果けっかです。

図4 地球全体の大気のシミュレーション

図4 地球全体の大気のシミュレーション
大気を細かく分けて雲の動きを計算し、台風の発生のしくみを調しらべた。
(海洋研究開発機構、東京大学大気海洋研究所、理化学研究所計算科学研究機構の共同研究/可視化 吉田龍二)

図5 自動車の周りの空気の流れのシミュレーション

図5 自動車のまわりの空気の流れのシミュレーション
実際じっさいに走っている自動車のまわりの空気の流れをくわしく計算した。
(神戸大学、広島大学、理化学研究所計算科学研究機構、マツダ株式会社)

宇宙うちゅうの分野では、超新星ちょうしんせい爆発ばくはつのシミュレーションに成功せいこうしました(図6)。超新星爆発ちょうしんせいばくはつのしくみはよくわかっていませんでしたが、このシミュレーションによって、しくみがわかってきました。このほかにも、多くの分野で多くのシミュレーションが行われ、「けい」の計算能力のうりょくがあったからこそられた結果けっかが次々に報告ほうこくされました。

図6 超新星爆発のシミュレーション

図6 超新星爆発ちょうしんせいばくはつのシミュレーション
理論りろんもとづいた計算で、超新星爆発ちょうしんせいばくはつ再現さいげんした。爆発ばくはつ、a,b,c,dのじゅんに進む。
(国立天文台 滝脇知也、固武慶、諏訪雄大)

やく7年にわたって使われ、400万件以上けんいじょうの計算を行った「けい」は、2019年8月にシャットダウンされ、役目を終えました。「けい」をつくり、使う中で蓄積ちくせきされた技術ぎじゅつ知識ちしきは、次のスーパーコンピュータ「富岳ふがく」にがれたのです。

※図2~6のクレジットの組織名、所属は成果発表当時のものです。

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