ハロー！スパコン 富岳版

第4回 「京けい」を超こえろ！
～スーパーコンピュータ「富岳ふがく」～

キャラクターアイコン：タイチ

「京けい」が引退いんたいした後は、どうなったの？

キャラクターアイコン：コンちゃん

「京けい」は解体かいたいされ、一部の部品は
全国各地かくちの科学館で展示てんじされています。

キャラクターアイコン：レイナ

どこで見られるのかな。
今度調べてみようっと。

キャラクターアイコン：タイチ

そういうことじゃなくって、ぼくが知りたかったのは、「京けい」の代わりのスパコンをつくったかどうかなんだ。活躍かつやくしていた「京けい」がなくなったんだから、心配だよ。

キャラクターアイコン：ももせさん

「京けい」があった部屋に、
すぐに新しいスパコンが入ったの。
「京けい」よりももっと高性能こうせいのうだから、
安心してね。

キャラクターアイコン：スパやん

ずいぶん早業やな。

キャラクターアイコン：ふがくん

新しいスパコンは「富岳ふがく」って名前なんだ。
ふがくんの名前とそっくりでしょ？

キャラクターアイコン：えくささん

「京けい」の後継あとつぎとなるスパコンをつくるプロジェクトは、2014年から始まりました。
「どのような目的もくてきで使うのか」、「どのぐらいの計算能力のうりょくを目指すのか」を、
スパコンをつくる人と使う人がいっしょになって考え、
CPUシーピーユーを何個なんこ使うかといったスパコンの「中身」を決めていきました。
また、計算に使うアプリケーション（ソフトウェア）も、
スパコンの中身に合わせてつくりあげていきました。

2019年5月には、スーパーコンピュータ「富岳ふがく」と名前が決まり、2019年12月には、「京けい」を撤去てっきょした後の計算機室けいさんきしつに、「富岳ふがく」の本体が運はこび込こまれ始はじめました（図1）。そして、2020年4月、まだ運はこび込こみが続つづくなかで、計算を開始しました。このころ、新型しんがたコロナウイルスの感染かんせんが広がり始めたため、それを防ふせぐための計算に一刻いっこくも早く「富岳ふがく」を使おうということになったからです（詳くわしくは第6回で）。実は、「富岳ふがく」自身も新型しんがたコロナウイルスの影響えいきょうを受け、工場での組み立てや神戸への輸送ゆそうの遅おくれが心配されましたが、関係かんけいする人たちの努力どりょくにより、予定通り5月には据すえ付つけが完了かんりょうしました。

図1　「富岳」の据え付け作業（2019年12月）

図1　「富岳ふがく」の据すえ付つけ作業（2019年12月）

「富岳ふがく」とは、富士ふじ山のことです。日本一高い富士ふじ山のように高い計算能力のうりょくをもち、裾野すそのが広い富士ふじ山のように幅はば広い分野で多くの研究者に使ってもらいたいという願ねがいが、「富岳ふがく」という名前には込こめられています（図2）。

図2　「富岳」という名前に込められた意味。標高が性能の高さを表し、すそのの広さが使える分野の広さを表す。

図2　「富岳ふがく」という名前に込こめられた意味

「富岳ふがく」も、「京けい」と同じようにCPUシーピーユーをたくさん使うことで計算を速くする方式のスパコンで、CPUシーピーユーの数は約やく16万個こにもなります。このCPUシーピーユー（図3）は、スマホやタブレットなどに広く使われているイギリスのARMアーム社の製品せいひんを、スパコンに合わせて進化させたものです。このCPUシーピーユーを働はたらかせるためのプログラムは書きやすく、様々な種類しゅるいの計算に使えることが大きな特徴とくちょうで、「京けい」で大きな成果をあげたシミュレーションだけでなく、人工知能ちのうに必要ひつような計算も高速で行うことができます。また、計算の際さいに使う電力が少ないことも特徴とくちょうです。

図3　「富岳」のCPU

図3　「富岳ふがく」のCPUシーピーユー
CPUシーピーユーの大きさは約6センチ四方で、計算をする部分ぶぶん（計算コア、図中ではCoreコアと表示ひょうじ）と、計算する数字や計算結果けっかを置いておく部分ぶぶん（メモリ、図中ではL2Cacheエルツーキャッシュ）、ほかのCPUシーピーユーとの通信つうしんの出入り口（インターフェース、図中ではTofuD Interfaceトーフディー インターフェースやHBM２ Interfaceエイチビーエムツー インターフェースなど）などからなっている。回路の線の幅はばはわずか7ナノメートル（1ナノメートルは1メートルの10億おく分の1）。
（提供：富士通株式会社）

新型しんがたコロナ対策たいさくの計算の一方で、計算能力のうりょくを確たしかめるための計算も行われ、「富岳ふがく」はすばらしい結果けっかを出しました。2020年6月に、スパコンの4種類しゅるいのランキングのすべてで世界一となり、2020年11月にも、再ふたたび四冠かんを達成たっせいしたのです（図4）。しかも、6月から11月の間に富岳ふがくの計算能力のうりょくはさらに向上し、2位以下いかとの差さは6月よりも大きくなりました。

4種類しゅるいのランキングの1つめはTOPトップ500で、同じプログラムで決まった計算をしたときの計算速度を競きそいます（第1回、第3回にも出てきましたね）。「富岳ふがく」は6月に1秒間に41京けい回（「京けい」の約やく40倍ばいにあたる）という圧倒的あっとうてきな計算速度を達成たっせいし、11月にはその記録きろくを44京けい回まで伸のばして2期連続れんぞくで世界一になりました。2つめはHPCGエイチピーシージーで、TOPトップ500とはちがう種類しゅるいのプログラムで計算速度を比くらべるものです。これも、「富岳ふがく」は2期連続れんぞくで2位以下いいかを大きく引ひき離はなし、1位いとなりました。

3つめのHPL-AIエイチピーエル エーアイは、TOPトップ500と同じプログラムを使うのですが、人工知能ちのうに適した計算法ほうで計算した場合の速度を比くらべます。このランキングは2020年6月から始まり、「富岳ふがく」は初代しょだいと2代目の世界一に輝かがやきました。4つめはGraphグラフ500です。グラフとは、たくさんの頂点ちょうてんを線でつないだ迷路めいろのようなもので、たとえば、「1つの町の全部の家に電気を送るときに一番ムダの少ない配線の仕方は？」といった問題を解とくときに利用されます。このランキングでは、ある決まった問題を解とくのにかかる時間を比くらべます。6月も11月も、「富岳ふがく」は最短さいたんの時間で解とくことができました。

4種類しゅるいのランキングは、計算能力のうりょくを比くらべるときの「目のつけどころ」がどれも違ちがいます。2期連続れんぞくで4つとも世界一になったことは、「富岳ふがく」がどんな使い方でも高い能力のうりょくを発揮はっきできるスパコンであることを証明しょうめいしていると言えるでしょう。

図4　「富岳」が獲得した、計算能力ランキング世界一の表彰状

図4　「富岳ふがく」が獲得かくとくした、計算能力のうりょくランキング世界一の表彰状ひょうしょうじょう
左上 TOP500、右上 HPCG、左下 HPL-AI、右下 Graph500。

「富岳ふがく」を使った研究者たちからは、「とても使いやすいスパコンだ」という声が寄よせられています。「富岳ふがく」も、「京けい」と同じように、私わたしたちの社会の問題の解決かいけつや科学の進歩に役立つ計算をどんどん実行してくれることでしょう。

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