
クイズ:次の3つのうち、スパコンが
使われているのはどれでしょう?
1.天気予報
2.病気の診断
3.自動車の自動運転
答え:
1.使われています。
2.これから使われるようになります。
3.自動車の自動運転ができるようにするために、スパコンを使って研究が行われています。
解説:
1.天気予報
天気の変化は、大気の状態(気温、気圧、湿度、風速、風向などの値)の変化でとらえることができます。そして、大気の状態は、大気の流れや熱の出入りなどの法則に従って変化します。そこで、法則を表す式に今日の大気の状態のデータを入れて計算すると、明日の大気の状態を予測することができます。天気予報は、このような予測をもとにして行われています。
実際には、大気をたくさんのブロックに分け(図1)、そのブロックの中で気温、気圧などの値がどう変化するかを計算します。正確に予測するには、ブロックを小さく分け、時間を少しずつ進めながら計算する必要があるため、計算量は非常に多くなります。そこで、計算にはスパコンが使われています。
天気予報のように、自然界の法則に基づいた計算で未来を予測することを「シミュレーション」といいます。スパコンを使ったシミュレーションは、天気予報だけでなく、薬の開発、自動車の設計、電子材料の開発などに幅広く使われています。
2.病気の診断
肺がんや肺炎の診断には、「X線CT」という方法で、肺を輪切りにするように撮影した画像が使われます(図2)。
現在は、お医者さんがCT画像を見て、病気があるかどうかを診断しています。しかし、病気(がんや炎症)のある場所、病気になった場所の見え方は患者さんごとに違うため、肺がんや肺炎などの病気があるかどうかを画像から正しく診断するにはお医者さんの経験が必要です。
図2 肺のCT検査と、検査結果の画像(イメージ)
そこで、人工知能(AI)に診断させようという研究が進んでいます。まず、お医者さんが病気の場所をマークしたたくさんのCT画像を集めます。
次に、これらの画像をAIに学習させ、病気の見分け方のルールをAIに見つけさせます。
このAIに、まだ診断されていないCT画像を見せて、病気のある場所を見つけてもらうのです。たくさんの画像データからルールを見つけるにも、ルールをもとに病気を見つけるにも、大量の計算が必要なためスパコンが使われます。
このように、大量のデータを扱う「データ科学」とAIを組み合わせる方法は、病気の診断だけでなく、自動翻訳や、コンビニの商品の仕入れなど、いろいろなところに使われ始めています。このやり方では、「人間には見えないルール」をスパコンが探し出してくれる可能性があり、より正確な判断をしてくれるようになるかもしれません。
3.自動車の自動運転
人が自動車を運転するときは、目や耳で周りのようすを知り、少し先のことを予測して次に何をすべきかを判断し、ハンドルを切るなどの操作をします。自動運転では、車につけたカメラなどで周りのようすを知り、AIが予測と判断を行い、ハンドルやブレーキなどを自動で動かします。
自動車はあちこちの道を走り、隣を走る車はいつも違います。ですから、AIが周りのようすをもとに予測と判断を行うには、様々な「周りのようす」のデータをAIに学習させ、「こういうときはこうなりそうだからこうする」というルールを見つけさせなければなりません。そのために、スパコンが使われます。自動運転の自動車には、小さなスパコンが積まれることになるでしょう。
さらに、自動運転の学習では、シミュレーションも使われます。様々な「周りのようす」を、スパコンを使ったシミュレーションでつくりだし、それをAIに学習させるのです。
シミュレーションなら、実験よりもずっと簡単に大量のデータを得ることができるだけでなく、例えば「歩行者にぶつかる」といった、実際にはデータを取れないような「周りのようす」も学習させることができます。
このように、「データ科学とAI」を、シミュレーションと組み合わせることも、スパコンの重要な役割となってきています。