R-CCSは、日本の計算科学技術の発展において中心的な役割を担っており、この活動を通じて得た先進的な技術・知見を積極的に活用し、関係機関と連携して、計算科学技術を支える人材の育成と交流を推進している。
大学院生、若手研究者、企業技術者等を対象とした人材育成事業や、小中学生、高校生などの若年層を対象とした啓発活動を通じて、「計算科学及び計算機科学の連携・融合を図れる人材の育成」、「高度な計算科学技術を使いこなせる人材の育成」、「産業界をはじめとした高度な計算科学技術の利活用推進に寄与する人材の育成」を目指す。
R-CCSでは、理化学研究所と大学間の連携大学院協定により、神戸大学大学院システム情報学研究科大規模計算科学講座及び東北大学大学院情報科学研究科先進的計算システム論講座を設置し、若手人材の育成に寄与している。
神戸大学は2013年4月から、東北大学は2019年4月から講義等により大学生の指導を行っており、現在、神戸大学のシステム情報学研究科の客員教員(客員教授6名、客員准教授3名)と、東北大学の情報科学研究科の客員教員(客員教授2名)に計11名の研究者が着任しているのに加え、複数の研究者が非常勤講師等を務めている。
2023年度は、神戸大学ではシステム情報学研究科にて、大規模シミュレーション総論(前期14 回、2 単位)をオンライン開講、東北大学では学生向けの講演や、所属研究科のラボと共同研究等を行った。
「京」「富岳」に代表されるスーパーコンピュータを駆使して新しいことに挑戦したいと考えている大学院生や若手研究者等の人材育成を目的として、2011年からサマースクールを開講している。
2023年度は、「KOBE HPC サマースクール(初級)」 を2023年9月18日(月・祝)~9月22日(金)の5日間、神戸大学統合研究拠点コンベンションホール にて実施し、40名が参加した。
本スクールは、R-CCS、神戸大学計算科学教育研究センター、兵庫県立大学大学院シミュレーション学研究科の三者共催、一般財団法人高度情報科学技術研究機構、公益財団法人計算科学振興財団の後援にて実施した。
2010年から欧州PRACE及び米国XSEDEが開催してきたHPCにおける国際的な人材育成を目的としたサマースクールに、R-CCSは2013年度から主催機関として参画している(2014 年度からCompute/Calcul Canada が参加、2018 年度よりSciNet HPC Consortium に交替)。例年、6月下旬から7月初旬頃に、主催機関が交替でホストとなり、各国で1週間開講している。
2023年度は、アメリカ・アトランタで実施した。日本からは8名の受講者および講師として今村俊幸チームリーダー(大規模並列数値計算技術研究チーム)が参加した。
2018年から、Society 5.0実現に向け、次代を担う国際的な視野を持った計算科学技術分野の若手研究者等の育成のため、国内外の学生(大学院生)や研究者、民間企業の技術者等を対象に、並列計算機を使いこなすためのプログラミング手法を習得できる RIKEN International HPC Summer Schoolを開講している。
2023年度はオンライン開講とし、合計47名の参加があった。
スクールでは中島研吾副センター長、今村俊幸チームリーダーによる並列計算機を使いこなすためのプログラミング手法の習得を目指した講義と、スーパーコンピュータ「富岳」を用いた演習を行った。
さらに2022年から、より高度なプログラミング手法の習得を目指すRIKEN International HPC Spring Schoolを開講している。2023年度は、オンラインにて講義・演習を行い、合計27名の参加があった。
2014年から国内在住の学生(高専、大学院生)を対象に、計算科学研究センターの研究チームでの研究を実習・体験することを通じ、計算科学技術への理解を深めること、また最先端の計算科学の研究開発に従事する人材の育成事業を目的として実施している。
2023年度はオンサイト実習19名(8チーム)を受入れた。
研究チームでの海外学生の受入れ増加の実態を踏まえ、R-CCSの研究者の国際的交流による研究推進等を促進するために、2017 年から海外在住の学生(博士後期課程)を対象に実施している。
2023年度は、オンサイト実習26名(11チーム)を受け入れた。
2015 年に、R-CCS webページ上に計算科学技術分野に係るe ラーニングアーカイブページを開設した。「計算科学・計算機科学についての学習を深めたい」、「スーパーコンピュータによる大規模な計算科学を駆使した新しい科学を開拓したい」と考える学生や研究者をはじめ、計算科学技術分野に興味がある一般の方に向けて、R-CCS や関係機関等が行ったスクール、シンポジウム等の講義動画や関連資料を集約しており、現在1000を超える動画を公開している。
異分野間の壁を超えた研究協力を促進し、新しい学問分野の開拓を目指すため、研究者間の情報交換・相互理解の場を提供し、研究協力のきっかけを作ることを目的として、R-CCS Café を開催している。これはR-CCS 内の研究者等がお互いの研究内容をわかりやすく紹介するもので、2024年3月末までに261回開催、2023年度はハイブリッドで実施し、毎回30~50名程度が参加し、活発な議論が行われた。