5 「富岳」を用いた研究活動等

5-2 Society 5.0実現に向けた貢献

2018年11月開催の総合科学技術・イノベーション会議での「フラッグシップ2020プロジェクト(ポスト「京」の開発)」の中間評価において、「富岳」が「Society 5.0における研究開発基盤として生かされるよう他府省間や大学、研究機関間での連携をはかること、Society 5.0において重要となるビッグデータ、AI等のアプリケーションについても高い性能を有することを確認すること」と指摘されている。

Society 5.0で実現する社会のイメージ
Society 5.0で実現する社会のイメージ

2020年度は、「富岳」の試行的利用環境でありながら、次のような取組を通じて「富岳」のプラットフォーム化及びその仕組みづくりを行った。

5-2-1 新型コロナウイルス対策を目的としたスーパーコンピュータ「富岳」の優先的な試行的利用

国難ともいえる新型コロナウイルス対策に貢献する成果をいち早く創出するために、文部科学省と連携し、関連研究開発を公募、6課題に計算資源を供出した。加えて、全体マネジメントの役割を担い、課題代表者と文部科学省、理研の情報共有の場として14回の全体会合を開催し、研究者の要望を踏まえた運用支援や「富岳」の高度化につながり得るアプリケーションの最適化等を最大限支援した。特に、「室内環境におけるウイルス飛沫感染の予測とその対策」に関する研究では、マスクの装着効果や効能を定量的なデータから証明し、世界に向けて発信したほか、シミュレーション結果が政策に反映され、国民の感染対策に非常に大きな影響を与えた。

5-2-2 地元自治体との連携

兵庫県及び神戸市による財政支援による研究推進を、地元貢献の観点から、研究成果が具体的な施策へ反映されることで社会還元に貢献するため、①Society 5.0実現への貢献、②ビジブルな地元貢献、③相互利益の関係の構築のため、Society 5.0プラットフォーム化へのシーズが地元発で創出されるよう、兵庫県・神戸市と協議のうえ、研究成果の広報の在り方等について見直しを行った。また、研究課題の中に、地元での幅広い人材育成を位置づけ、取り組むこととした。

5-2-3 拠点設置準備

スーパーコンピュータ「富岳」の高度化及び利用拡大を図りつつ、Society 5.0 の実現に不可欠な計算機インフラとすることを目指し、いくつかの社会課題に取り組み、利用者の多様なニーズに応える安定的な計算基盤として「富岳」を共用に供するための拠点を2021年度に、理研としてR-CCS内に組織すべく準備を行い、拠点に必要な機能を整理した。このような取組を文部科学省とも連携して実施したことで、文部科学省における「「富岳」Society 5.0推進利用」の制度趣旨や2021年度の「富岳」成果創出加速プログラムの公募趣旨への反映につながった。