1 「富岳」の共用と組織

1-1 共用の枠組み

スーパーコンピュータ「富岳」(以下、「富岳」)は、「特定先端大型研究施設の共用の促進に関する法律(2006年7月施行)」(以下、共用法)に基づく共用施設であり、「富岳」の共用にあたっては、国の基本方針の下、「富岳」の設置者・運用実施主体である国立研究開発法人理化学研究所計算科学研究センター(RIKEN Center for Computational Science 以下、R-CCS)及び登録施設利用促進機関である一般財団法人高度情報科学技術研究機構(Research Organization for Information Science and Technology 以下、RIST)が緊密に連携・協力して業務を実施している。また、業務の実施においては、計算科学技術に関わるユーザによって形成された一般社団法人HPCIコンソーシアムをはじめとする関係機関とも協力している。この枠組の中で、R-CCSは「富岳」の運用及び高度化等を担う。一方、RISTは「富岳」の利用者選定業務及び利用支援業務を担い、利用者に対する一元的窓口業務としてのヘルプデスクによる利用相談やプログラム高度化支援などを実施している(図1)。

図1 「富岳」の共用の枠組み

1-1-1 「富岳」共用の開始

「富岳」は、文部科学省の「フラッグシップ2020プロジェクト(Flagship 2020 Project)」のもと、2014年から開発・整備が進められた。2019年には「富岳」の製造が開始され、2021年度の共用開始に向けて調整を進めている中、2020年4月に新型コロナウイルスによる感染拡大の事態に対応するため「富岳」の計算機資源を優先して提供した。さらに、試行的利用環境ながらTop500、HPCG、HPL-AI、Graph500の各ベンチマークにおいて2期連続世界第1位を獲得する等、「富岳」の総合的な性能の高さを示した。

図2 「富岳」全系によるベンチマークテスト結果(2020年11月)

「富岳」によって我が国が直面する課題の解決や産業競争力の強化へ可能な限り早期に貢献するため、当初の予定を前倒しして2021年3月9日に共用を開始した。今後、新たな価値を生み出す超スマート社会の実現を目指すSociety 5.0において、シミュレーションによる社会的課題の解決やAI開発および情報の流通・処理に関する技術開発を加速するための情報基盤技術としての活躍が期待される。