1 「富岳」の共用と組織

1-2 理化学研究所 
計算科学研究センター

理化学研究所 計算科学研究センター(R-CCS)は2018年4月、理化学研究所の研究センターの一つとして発足し、国際的な高性能計算科学(High Performance Computing/HPC)分野の中核拠点として研究開発を推進している他、2021年3月から共用が開始されたスーパーコンピュータ「富岳」の運用を行っている。研究開発においては、「計算の科学」と「計算による科学」、両者の相乗効果による「計算のための科学」の探求と、その成果であるソフトウェア等のテクノロジーを「コア・コンピタンス」と位置付けそれらの発展や国内外への普及を推進している他、国内外の関連する研究機関や大学等とも積極的に連携し、研究開発や人材育成に努めている。

1-2-1 R-CCSの組織

R-CCSは、我が国全体の計算科学技術の発展に中心的な役割を担っており、図1に示した「研究チーム」及び「部門」で構成されている。2021年4月1日には、新たにHPC/AI技術を用いて創薬における革新的なプラットフォームの構築等を目指す「HPC/AI駆動型医薬プラットフォーム部門」を設置した。また、「富岳」により、サイバー空間でのシミュレーションとフィジカル空間での現象(計測値等)の高度な融合が実現され、全体のシミュレーションを最適化し、国が推進する「Society 5.0」の実現に産業界等とともに貢献するため、「富岳」Society 5.0推進拠点」を理化学研究所の東京地区(日本橋)に開設した。

研究チームでは、計算科学・計算機科学の共通基盤的研究、分野融合研究を進めるとともに、将来重要となる領域の開拓を行い、「富岳」を核として我が国の計算科学・計算機科学の橋頭堡として、同分野での研究開発を先導している。さらに関係機関等とも密な連携を取り、優れた成果の創出を目指している。

HPC/AI駆動型医薬プラットフォーム部門では、AI、分子シミュレーション、実験を融合する新たな方法論を開発し、HPC/AI駆動型生命科学統合プラットフォームを構築することで、生命科学、創薬、医療の新たな開拓を目指している。

運用技術部門では、「富岳」を中心とするR-CCSの計算機システムの運用や、空調、電源、冷却施設等の維持管理・運転、システム高度化等を実施している。2021年7月にはR-CCSで開発等されたソフトウェアの改良に関する研究開発を行う「チューニング技術ユニット」を、超高速電子計算機システムに係るソフトウェア環境の改善・高度化に関する研究開発を行う「ソフトウェア開発技術ユニット」に改め、「富岳」運用の高度化及び支援体制の強化を行った。

また、R-CCSの研究開発活動を推進し、支援する部署として、R-CCSにセンター長室、理化学研究所の神戸事業所に計算科学研究推進室及び研究支援部が設置されている。

図1 R-CCSの組織 (2021年10月1日現在)

1-2-2 計算科学研究センターの予算

計算科学研究センターの予算として2021年度は、「富岳」の運用に向けた必要な経費として総額133.7億円がR-CCSに措置された。

この予算額には、建屋や計算機システムの保守費、光熱水費、通信ネットワーク等の経費として117.6億円が計上されている。