2020年度の「富岳」はシステム調整段階にあり、主にR-CCSによるシステム調整が実施されるとともに、システム調整段階のベストエフォートとして「システム調整段階における試行的利用」に資源が供された。システム調整による利用については、R-CCSの報告に委ねるとして、「システム調整段階における試行的利用」では、共用開始後の一般利用や産業利用に準じた「富岳」試行的利用課題(早期利用課題、利用準備課題)と「富岳」成果創出加速プログラム課題が実施された。以下にこれらの利用実績を示す。実施課題ごとの利用実績については、巻末の参考2を参照されたい。
「富岳」試行的利用課題の2020年度利用実績は表1に示す通りである。
課題数 | 割当資源量 (下期)(NH) |
利用実績 (下期)(NH) |
利用率 (下期) |
|
---|---|---|---|---|
早期利用課題 | 30 | 14,460,945 | 16,535,094 | 114.3% |
利用準備課題 | 90 | 5,499,655 | 2,773,787 | 50.4% |
早期利用課題は9月に選定を行い、10月から利用を開始した。利用期間は最大6か月間、課題当たりの要求資源量は最大35万ノード時間(NH)であった。実施課題数は30件で、最終的な利用率は114.3%であった。利用率が100%を超える理由は、「京」の運用と同様に、「富岳」においても割当資源量を使い切った課題を対象に、ジョブの実行優先度を下げ、超過利用を認める制度(*)によるものである。
(*)R-CCS及びRISTから「京」の利用率改善策として提案し、2016年2月4日の選定委員会で承認された。「富岳」においても同様に運用を継続している。
利用準備課題は、10月1日から申請の受付を開始し、随時選定を実施した。利用期間は最大6か月間、課題当たりの要求資源量は最大10万ノード時間(NH)であった。実施課題数は最終的に90件、利用率は50.4%であった。
「富岳」成果創出加速プログラム課題の2020年度利用実績は表2に示す通りである。
課題数 | 割当資源量 (通期)(NH) |
利用実績 (通期)(NH) |
利用率 (通期) |
|
---|---|---|---|---|
領域1 | 7 | 30,095,105 | 37,891,039 | 125.9% |
領域2 | 4 | 32,422,343 | 33,526,466 | 103.4% |
領域3 | 8 | 40,613,455 | 42,471,430 | 104.6% |
領域4 | 1 | 2,519,765 | 2,518,681 | 100.0% |
合計 | 20 | 105,650,668 | 116,407,616 | 110.2% |
「富岳」成果創出加速プログラム課題は2019年度内に課題の選定が行われ、4月から利用を開始した。資源量については、「富岳」がシステム調整段階であることから、利用可能な資源量を調整しながら、複数回に分けて配分された。利用期間は4月からの1年間で、実施課題数は20件(*)であった。最終的な利用率は110.2%であった。利用率が100%を超える理由は、「富岳」試行的利用課題の項に示した通りである。
(*)「富岳」成果創出加速プログラム課題として採択された課題数は19件であるが、課題側の都合により、1件は2つに分割して実施された。
共用開始以降に実施された課題の利用実績については、2020年度内の期間が20日間程度であり、また、2021年度に継続して利用される課題であることから、利用実績については2021年度の年報で改めて報告することとする。参考までに共用開始後、2020年度末までの令和3年度(2021年度)A期課題の利用実績を表3に示す。
課題数 | 割当資源量(NH) | 利用実績(NH) | 利用率 | ||
---|---|---|---|---|---|
2020年3月 | 通期(参考) | 2020年3月 | 2020年3月 | ||
一般課題 | 38 | 3,261,112 | 166,316,913 | 759,572 | 23.3% |
若手課題 | 7 | 400,851 | 20,443,401 | 0 | 0.0% |
産業課題 | 14 | 1,172,761 | 59,810,841 | 30,136 | 2.6% |
利用促進課題 | 15 | 439,027 | 22,390,407 | 0 | 0.0% |
合計 | 74 | 5,273,751 | 268,961,562 | 789,708 | 15.0% |
2020年度は「システム調整段階における試行的利用」として、「富岳」試行的利用課題(早期利用課題、利用準備課題)及び「富岳」成果創出加速プログラム課題が実施された(*)。また、3月9日の共用開始以降には、令和3年度(2021年度)A期課題による利用が前倒しで開始された。随時募集課題は2020年度内に採択されたが、利用実績はなかった。
2020年度の月別利用実績を図1に示す。
「富岳」のシステム調整は11月までにほぼ完了し、12月以降はほぼシステム全体が「試行的利用」に供されたため、大きく利用実績が伸びている。ただし、1月には共用開始後の環境への切り替え保守が実施されたため、利用実績は低くなっている。
(*)「新型コロナウイルス対策を目的としたスーパーコンピュータ「富岳」の優先的な試行的利用」の利用状況については、R-CCSの報告に委ねる。
2020年度の実施課題における参加者数を表4に示す。年度合計の1,798名は、「京」の通年運用の最終年度である2018年度の実施課題の参加者数合計1,745名とほぼ同規模であった。
(*)システム調整に関わる利用及び「新型コロナウイルス対策を目的としたスーパーコンピュータ「富岳」の優先的な試行的利用」による利用を除く。
課題種類 | 利用者数 内訳 | 利用者数 | |||
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産業界 | 大学・研究機関 | 国立研究開発法人 | |||
試行的 利用課題 |
早期利用課題 | 41 | 106 | 50 | 197 |
利用準備課題 | 114 | 180 | 43 | 337 | |
成果創出加速プログラム | 93 | 409 | 126 | 628 | |
2021年度 A期 |
一般課題 | 19 | 167 | 98 | 284 |
若手課題 | 0 | 17 | 5 | 22 | |
産業課題 | 122 | 132 | 19 | 273 | |
利用促進課題 | 7 | 38 | 12 | 57 | |
合計 | 396 | 1,049 | 353 | 1,798 |