3 「富岳」の利用者選定

3-3 利用状況

3-3-1 「富岳」全体

(1) 2020年度に実施された課題の利用実績

2020年度の「富岳」はシステム調整段階にあり、主にR-CCSによるシステム調整が実施されるとともに、システム調整段階のベストエフォートとして「システム調整段階における試行的利用」に資源が供された。システム調整による利用については、R-CCSの報告に委ねるとして、「システム調整段階における試行的利用」では、共用開始後の一般利用や産業利用に準じた「富岳」試行的利用課題(早期利用課題、利用準備課題)と「富岳」成果創出加速プログラム課題が実施された。以下にこれらの利用実績を示す。実施課題ごとの利用実績については、巻末の参考2を参照されたい。

〇「富岳」試行的利用課題(早期利用課題、利用準備課題)

「富岳」試行的利用課題の2020年度利用実績は表1に示す通りである。

表1 2020年度「富岳」試行的利用課題の利用実績
課題数 割当資源量
(下期)(NH)
利用実績
(下期)(NH)
利用率
(下期)
早期利用課題 30 14,460,945 16,535,094 114.3%
利用準備課題 90 5,499,655 2,773,787 50.4%

早期利用課題は9月に選定を行い、10月から利用を開始した。利用期間は最大6か月間、課題当たりの要求資源量は最大35万ノード時間(NH)であった。実施課題数は30件で、最終的な利用率は114.3%であった。利用率が100%を超える理由は、「京」の運用と同様に、「富岳」においても割当資源量を使い切った課題を対象に、ジョブの実行優先度を下げ、超過利用を認める制度(*)によるものである。

(*)R-CCS及びRISTから「京」の利用率改善策として提案し、2016年2月4日の選定委員会で承認された。「富岳」においても同様に運用を継続している。

利用準備課題は、10月1日から申請の受付を開始し、随時選定を実施した。利用期間は最大6か月間、課題当たりの要求資源量は最大10万ノード時間(NH)であった。実施課題数は最終的に90件、利用率は50.4%であった。

〇「富岳」成果創出加速プログラム課題

「富岳」成果創出加速プログラム課題の2020年度利用実績は表2に示す通りである。

表2 2020年度 「富岳」成果創出加速プログラム課題の利用実績
課題数 割当資源量
(通期)(NH)
利用実績
(通期)(NH)
利用率
(通期)
領域1 7 30,095,105 37,891,039 125.9%
領域2 4 32,422,343 33,526,466 103.4%
領域3 8 40,613,455 42,471,430 104.6%
領域4 1 2,519,765 2,518,681 100.0%
合計 20 105,650,668 116,407,616 110.2%

「富岳」成果創出加速プログラム課題は2019年度内に課題の選定が行われ、4月から利用を開始した。資源量については、「富岳」がシステム調整段階であることから、利用可能な資源量を調整しながら、複数回に分けて配分された。利用期間は4月からの1年間で、実施課題数は20件(*)であった。最終的な利用率は110.2%であった。利用率が100%を超える理由は、「富岳」試行的利用課題の項に示した通りである。

(*)「富岳」成果創出加速プログラム課題として採択された課題数は19件であるが、課題側の都合により、1件は2つに分割して実施された。

〇共用開始後の利用実績

共用開始以降に実施された課題の利用実績については、2020年度内の期間が20日間程度であり、また、2021年度に継続して利用される課題であることから、利用実績については2021年度の年報で改めて報告することとする。参考までに共用開始後、2020年度末までの令和3年度(2021年度)A期課題の利用実績を表3に示す。

表3 令和3年度(2021年度)A期課題の利用実績
課題数 割当資源量(NH) 利用実績(NH) 利用率
2020年3月 通期(参考) 2020年3月 2020年3月
一般課題 38 3,261,112 166,316,913 759,572 23.3%
若手課題 7 400,851 20,443,401 0 0.0%
産業課題 14 1,172,761 59,810,841 30,136 2.6%
利用促進課題 15 439,027 22,390,407 0 0.0%
合計 74 5,273,751 268,961,562 789,708 15.0%
〇2020年度の月別利用状況

2020年度は「システム調整段階における試行的利用」として、「富岳」試行的利用課題(早期利用課題、利用準備課題)及び「富岳」成果創出加速プログラム課題が実施された(*)。また、3月9日の共用開始以降には、令和3年度(2021年度)A期課題による利用が前倒しで開始された。随時募集課題は2020年度内に採択されたが、利用実績はなかった。

2020年度の月別利用実績を図1に示す。

図1 2020年度システム利用実績(資源量)の月別推移

「富岳」のシステム調整は11月までにほぼ完了し、12月以降はほぼシステム全体が「試行的利用」に供されたため、大きく利用実績が伸びている。ただし、1月には共用開始後の環境への切り替え保守が実施されたため、利用実績は低くなっている。

(*)「新型コロナウイルス対策を目的としたスーパーコンピュータ「富岳」の優先的な試行的利用」の利用状況については、R-CCSの報告に委ねる。

(2) 課題参加者数(*)

2020年度の実施課題における参加者数を表4に示す。年度合計の1,798名は、「京」の通年運用の最終年度である2018年度の実施課題の参加者数合計1,745名とほぼ同規模であった。

(*)システム調整に関わる利用及び「新型コロナウイルス対策を目的としたスーパーコンピュータ「富岳」の優先的な試行的利用」による利用を除く。

表4 2020年度実施課題の参加者数
課題種類 利用者数 内訳 利用者数
産業界 大学・研究機関 国立研究開発法人
試行的
利用課題
早期利用課題 41 106 50 197
利用準備課題 114 180 43 337
成果創出加速プログラム 93 409 126 628
2021年度
A期
一般課題 19 167 98 284
若手課題 0 17 5 22
産業課題 122 132 19 273
利用促進課題 7 38 12 57
合計 396 1,049 353 1,798