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ユニタリ量子ダイナミクスをシミュレートするための完全並列化行列積状態アルゴリズム

論文発表

Posted On 2024.08.26

行列積状態(MPS)、つまり典型的なテンソルネットワーク状態に対する、ユニタリ量子力学を効率的にシミュレーションするための実空間完全並列化シミュレーションアルゴリズム(改良型pTEBD)を提案しました。これは、非平衡量子現象と量子計算を理解するための鍵となるものです。このアルゴリズムでは、量子回路の各層(ユニタリ量子力学の一般的な表現)が並列にシミュレーションされ [図 (b) 参照]、その結果得られたMPSは改良された並列MPS圧縮(IPMC)方法によってさらに圧縮されます [図 (c) 参照]。IPMCは、系のサイズに関係なく、すべての仮想ボンドを一定時間内に効率的に圧縮し、制御された精度で波動関数のノルムの安定性を維持しながら、逐次的な再正規化手続きを必要としません。このアルゴリズムの複雑さは O(1) であり、典型的なテンソルネットワークアルゴリズムにおける少なくとも O(N)(Nは系のサイズ)複雑さとは対照的です。改良型pTEBDアルゴリズムの模式図は、上記の図 (d) に示されています。
私たちは、R-CCSに設置されたスーパーコンピュータ富岳上で、1000を超える量子ビットを含む典型的な一次元および二次元の量子回路に対して、改良型pTEBDアルゴリズムを用いた広範なシミュレーションを実施しました。得られた数値結果は、改良型pTEBDアルゴリズムが、最新のMPSアルゴリズムと同レベルのシミュレーション精度を、多項式時間で短縮しながら達成することを明確に示しています。また、このアルゴリズムは、最新のスーパーコンピュータ上でほぼ完全なweak-scaling性能を発揮しています。この研究の詳細は、以下の論文に発表されています。

Journal reference: Rong-Yang Sun, Tomonori Shirakawa, and Seiji Yunoki, “Improved real-space parallelizable matrix-product state compression and its application to unitary quantum dynamics simulation” Phys. Rev. B 110, 085149.
DOI: https://doi.org/10.1103/PhysRevB.110.085149

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