RISTは、計算科学分野における国際競争力の向上及び国際協力の推進を図るため、「京」、「富岳」を海外の研究者等にも国内の研究者等と同様に公平に共用に供することで、国内外の研究者による先端的・革新的な研究等を促進している。
シンガポールとは、「京」を活用した国際交流を推進するために、2015年3月にHPC動向調査を実施して以降、シンガポール科学技術研究庁配下の2研究機関とHPCの推進について意見交換を行い、海外からの応募拡大を促進してきた。また、2016年6月には、将来の連携推進に資するため、NSCC(シンガポール国立スーパーコンピューティングセンター)と覚書(MOU)を締結し、以降、情報交換会を開催するとともに、HPCI公募情報のシンガポール内での広報等で協力をいただいている。
2021年度には、NSCCとスーパーコンピューティング分野における国際連携及び国際協力の促進を目的として、「富岳」を利用するプロジェクト募集に関する協力協定を11月に締結し、シンガポールの研究者を対象とした「富岳」国際連携課題を新たに設けた。以降、これに基づきNSCCが年に1回、課題募集を行っている。本件は、シンガポールの研究者が「富岳」にアクセスしやすい機会を提供し、国際的な共同研究の推進、研究開発の促進、日本のアプリケーション及び「富岳」のアーキテクチャーの国際的普及に貢献するものである。
また、2022年度には、ASEAN-HPCを推進するA*CRC(A*STAR Computational Resource Centre)がASEAN-HPC参加国の研究者による研究課題を取りまとめて課題代表者として「富岳」随時募集課題に応募する取り組みについて、理研R-CCSと共に適宜支援を行った。
欧州全体にわたる高性能計算資源を提供しているPRACE(Partnership for Advanced Computing in Europe)とRISTの間では、スーパーコンピュータの共用促進に係る情報交換に関するMOUを2014年10月に締結し、欧州主要国におけるHPCの取り組みに係る情報をHPCIの運営に反映できる基盤を形成するとともに、それぞれの主催する会議に相互招待し、各々の活動状況を発表するなどの交流を推進してきた。
2017年4月には、上記のPRACEと締結したMOUを、米国の大学のHPC利用促進組織であるXSEDE(Extreme Science and Engineering Discovery Environment)を加えた3機関のMOUに発展することで、RIST/PRACE/XSEDE間での協力を推進してきたが、XSEDEプログラムが2022月8月31日に終了したことに伴いMOUは終了した。その後XSEDEプログラムに代わりACCESS(Advanced Cyberinfrastructure Coordination Ecosystem: Services &Support)プログラムが開始されたことから、今後の3機関間の協力の可能性について意見交換を行った。
また、オーストラリアの国立スーパーコンピュータセンターNCI(National Computational Infrastructure)との間で、2020年5月にスーパーコンピュータの利用促進の分野における情報交換及び将来の連携の検討に関するMOUを締結している。なお、本MOUの有効期限が2023年5月19日であったので、期限を3年延長するための更新を2023年5月に行った。