2021年度は、主催・共催を合わせて34回(主催18回、共催16回)の講習会・セミナー・ワークショップを開催した(表1)。
RISTが主催したものには、(i) 「富岳」の利用者を対象とする 「富岳」利用セミナー、(ii) HPCIの利用者および利用予定者に加え、HPCI利用の裾野拡大のため、その利用検討者も対象とするHPCプログラミングセミナーおよびHPCアプリ講習会、(iii) 計算機シミュレーションに関心を有するアカデミアおよび産業界の研究者・技術者を対象とするワークショップがある。
共催として、理研R-CCSと連携し「富岳」を含むA64FXを搭載した計算機に関するチューニング技術を共有するためのMeeting for application code tuning on A64FX computer systems(A64FXチューニング技術検討会)を3回開催した。また、RISTが利用環境を整備した国プロの講習会を8回、「富岳」成果創出加速プログラム実施機関等と連携したOSSに関する講習会・セミナーを5回開催した。
2021年度は入門コース(座学)を5回、中級コース(座学)を1回開催した(全てオンライン)。利用者向けの情報共有の拡充のため、セミナー中の質問はFAQとしてまとめ、情報共有CMSに掲載した。入門コースでは、「富岳」の利用環境変更に合わせて資料を更新し、利用者が的確に情報を取得できるよう工夫した。中級コースでは、チューニング未経験者を対象とし、性能分析の方法や「富岳」向けのチューニングに関わる重要事項を説明することで、「富岳」を効率良く利用するための基礎知識を参加者が習得できるよう工夫した。今後は、前年度定めたコース設定の計画に基づき、中級コースの拡充、英語版資料の作成、そして「富岳」を利用したハンズオン講習会の実施等を目指す。
HPCで典型的なプログラミング技法習得を目的とするHPCプログラミングセミナーについて、2021年度は6回のセミナー(座学)を開催した(全てオンライン)。テーマ別受講コースを設定し(全4コース)、プログラミング言語 (Fortran、C/C++) の基礎は習得済みの初学者から小規模の並列計算の実行経験者までを想定し、本格的なHPC向けプログラミングを学習するために必要な知識を習得できるよう工夫した。今後は、オンライン開催を継続した上で、質問対応の利便性等の観点から、新型コロナウイルス感染症の感染状況を注視しつつ、会場開催の実施を目指す。
各分野で利用者が多いOSSの利用技術の習得を目的とするHPCアプリ講習会について、2021年度は材料系のOSSを対象に3回開催した(全てオンライン)。全てにおいて、参加者が「富岳」の実機にアクセスするハンズオン講習会を実現した。講習内容として、参加者が「富岳」でのジョブ実行やOSS利用の典型例を学習できるよう工夫した。
利用者が多いOSS等に関する利用事例、「富岳」を始めとするHPCIの計算機の利用情報、最新の研究動向などの共有を目的とし、材料系ワークショップ(物性・材料分野向け)およびCAEワークショップ(CAE分野向け)を企画した。2021年度は材料系ワークショップを2回、CAEワークショップ を1回開催した(全てオンライン)。両者ともに、「富岳」の共用開始を念頭に置いたテーマ設定とした。また、材料系ワークショップでは、当該分野における機械学習等の手法論的進展をテーマ選定で考慮した。これらのワークショップでは産業界からの参加が約6割と多かった。
物性・材料分野向けワークショップについては、会場での開催とオンラインでの開催を併用した開催(ハイブリッド形式)を企画したが、新型コロナウイルス感染症の拡大のためオンラインのみとした。来年度のワークショップの開催方式については、今後の感染症の状況を注視しながら、ハイブリッド形式あるいは会場開催の可能性を検討する。
2021年度は新型コロナウイルス感染症拡大防止の観点から、全ての講習会・セミナー・ワークショップは、オンラインでの開催を基本とした。主催者側としてオンライン開催の特徴を捉えることができ、安定した開催実績を積み上げることができた。一方で、参加者との対面でのやり取りの重要性を感じている。新型コロナウイルス感染症の状況を確認しつつ、今後は会場開催や会場・オンラインのハイブリット開催を検討してゆきたい。
主催した講習会・セミナーでは参加者に対してアンケート調査を実施した。2021年度の回答数は計584件で、その中で内容の満足度を尋ねた項目では、「満足」と「ほぼ満足」が合わせて95%を占めており、「不満」という回答はほぼ無く、高い評価を得た(図1)。この結果から、RISTが開催する講習会等は、概ね利用者のニーズに応えていると考えている。一方、少ないながらも「やや不満」という回答があることから、講習会等の内容やアンケート結果を分析して問題点を抽出し、来年度以降の改善に活用したいと考えている。
参加状況が把握できなかったため、申込人数であることに注意。