ハロー!スパコン 富岳版

第6回 いきなり見せつけた「富岳ふがく」の力

キャラクターアイコン:コンちゃん

実は、「富岳ふがく」は完成前かんせいまえから
活躍かつやくしています。

キャラクターアイコン:スパやん

どういうことなん?

キャラクターアイコン:タイチ

ぼく、テレビで見たよ。コロナでしょ?

キャラクターアイコン:ももせさん

そうよ。世界中がたいへんなときだから、
富岳ふがく」もコロナ対策たいさくのために
使おうって決まったの。

キャラクターアイコン:ふがくん

でも、コロナのために「富岳ふがく」を
つくったわけじゃないよね?

キャラクターアイコン:京太郎

はい。「けい」と同じように、ものづくりや
科学の進歩のための計算もしていますよ。

キャラクターアイコン:レイナ

富岳ふがく」では、台風の進路とか、
豪雨ごううが降る場所とかを、
すごく正確せいかく予報よほうできるって話も聞いたわ。

キャラクターアイコン:えくささん

2020年のはじめ、新型しんがたコロナウイルスによる感染症かんせんしょうCOVIDコビッド-19)が世界中で流行しはじめ、
重症者じゅうしょうしゃや死者もたくさん出るようになりました。
しかし、このウイルスが人に感染かんせんするようになったのははじめてのことだったので、感染かんせんふせぎ方もわからず、
治療ちりょうのやり方も手探てさぐりでした。そこで、世界中で多くの研究者が、
新型しんがたコロナウイルスによる被害ひがいを食い止めるための研究に取り組みはじめました。
その1つとして、日本では2020年4月に、完成前かんせいまえの「富岳ふがく」を新型しんがたコロナウイルス対策たいさくのために
使うことが決定され、まもなく5つのテーマで計算が始まりました(11月にはテーマがもう1つえました)。

テーマの1つは、すでに使われている薬の中から、新型しんがたコロナウイルス感染症かんせんしょうく薬をさがしだそうとするものです。新型しんがたコロナウイルスは人の細胞さいぼうの中でえるので、えるときに必要ひつようなタンパクしつはたらきをおさえれば、病気がひどくなるのをふせぎ、治療ちりょうすることができます。そこで、「富岳ふがく」の中で、増殖ぞうしょく必要ひつようなタンパクしつに、様々な薬を近づけて、薬がくっつくかどうかを調べました(動画1)。やく2000種類しゅるいもの薬を調べた結果、タンパクしつによくくっつくものが数十個すうじゅっこ見つかり、その中にはコロナウイルス感染症かんせんしょうの薬としてとても有望ゆうぼうなものもありました。この方法ほうほうは、新型しんがたコロナウイルス感染症かんせんしょう以外の病気の薬をさがすのにも役に立ちます。

動画1 新型しんがたコロナウイルス感染症かんせんしょうの薬を「富岳ふがく」でさが
ウイルスがえるのに必要ひつようなタンパクしつはい色)に薬(ピンク色)がくっつくかどうかを、「富岳ふがく」を使ったシミュレーションで調べた。こうしたシミュレーションをやく2000種類しゅるいの薬について行い、タンパクしつにくっつく薬をさがした。

もう1つのテーマは、「飛沫ひまつ」がどのように広がるかを明らかにするものです。飛沫ひまつとはすごく小さい水滴すいてきのことです。せきやくしゃみはもちろん、歌を歌ったり、おしゃべりをするときも、だえきや鼻水は飛沫ひまつとなってります。飛沫ひまつ新型しんがたコロナウイルスがふくまれていると、その飛沫ひまつんだ人が、ウイルスに感染かんせんする可能性かのうせいがあると考えられています。このため、部屋の中や乗り物の中で飛沫ひまつがどのように広がるかや、アクリル板やマスクが飛沫ひまつの広がりをどのようにおさえるかがわかれば、よりよい感染かんせん対策たいさくをとることができます。そこで、「富岳ふがく」を使って、様々な場合のシミュレーションが行われました。それらの結果けっかは、家庭だけでなく、交通機関きかん公共こうきょうの場所などで感染かんせん対策たいさくをとるさいに大いに役立ちました。

動画2 飛沫ひまつの広がりのシミュレーション
左は普通ふつうに話している場合、真ん中は歌を歌っている場合、右は強いせきを2回した場合。
飛沫ひまつりょうと広がりがちがうことがわかる。飛沫ひまつより小さいエアロゾルのりょうと広がりも明らかになった。マスクの材料ざいりょうちがいによって、飛沫ひまつさえぎ効果こうかちがいがあることも明らかになった。

新型しんがたコロナウイルス対策たいさくのテーマの計算が先に始まりましたが、これとは別に、「富岳ふがく」で取り組むべきテーマがやく20決められており、そちらの計算も行われています。20のテーマはどれも、「富岳ふがく」の計算能力を生かして、わたしたちの社会の問題の解決かいけつや、科学の進歩に貢献こうけんすることが目標もくひょうであり、大きく「医療いりょう」「防災ぼうさい」「エネルギー」「材料ざいりょう・ものづくり」「科学」に分けられます。

医療いりょう」のテーマには、1人1人のがんのちがいを明らかにするもの、心臓しんぞうの動きをシミュレーションして薬のき方を調べるもの、難病なんびょうの薬を短い期間でつくることを目指すものなどがあります。「防災ぼうさい」のテーマには、今よりずっと正確せいかくな天気予報よほうを目指すもの、地震じしんの発生によってどのような被害ひがいが起こるかを予測よそくするものがあります。「エネルギー」のテーマとしては、核融合反応かくゆうごうはんのう(太陽の中で莫大ばくだいなエネルギーを生み出している反応はんのう)を地上で起こすための研究、よりよい充電用じゅうでんようの電池や燃料ねんりょう電池の開発、効率こうりつがよく環境かんきょうやさしい発電方法ほうほうの開発などがあります。「材料ざいりょう・ものづくり」のテーマは、半導体はんどうたい磁石じしゃく、タービン、飛行機ひこうきなど様々なものが対象たいしょうです。「科学」のテーマには、宇宙うちゅうの形ができてから惑星わくせいができるまでの歴史れきしを明らかにするもの、細胞さいぼうの中で起こっていることを再現さいげんするもの、のうはたらきをさぐるものなどがあります。

けい」のテーマはシミュレーションを使うものが多かったのですが、「富岳ふがく」では、シミュレーションとビッグデータやAIエーアイを組み合わせて使うテーマが多くなっています。どんな計算結果けっかが出るのか、今から楽しみですね。

TOPへ