2022年度は38回の講習会・セミナー・ワークショップを開催した(表1)。RISTが主催したものが22回、他機関と共催したものが16回であった。
RISTが主催したものには、(i) 「富岳」の利用者を対象とする 「富岳」利用セミナー、(ii) HPCIの利用者 (利用予定者あるいは検討者を含む) を対象とするHPCプログラミングセミナー及びHPCアプリ講習会、(iii) 計算機シミュレーションに関心を有するアカデミア及び産業界の研究者・技術者を対象とするワークショップがある。
他機関と共催したものは、理研R-CCSとの連携による「富岳」を含むA64FXを搭載した計算機に関する技術の共有を目的としたMeeting for application code tuning on A64FX computer systems (4回開催)、RISTで利用環境を整備した国プロのアプリに対するハンズオン講習会 (7回開催。アプリはALAMODE、OpenMX、SMASH、AkaiKKR、PHASE/0、ABINIT-MP、SALMONの7種類) などが含まれる。なお、国プロのアプリについては、講師の負担軽減と参加者の利便性向上を狙い、事前学習用の動画を作成した。 以下に、RIST主催の講習会等について詳細を報告する。
2022年度は入門編(座学)を3回、中級編(座学)を4回開催した(全てオンライン)。入門編では、「富岳」の利用にあたり優先的に把握すべき事項を中心に説明した。また、英語版資料の作成も完了した。中級編は二部構成とし、第一部で性能分析の方法や「富岳」向けチューニングに関わる重要事項を、第二部で「富岳」における並列性能の向上に関する技法をそれぞれ説明した。また、これまで情報共有CMSに掲載していたQA集は、利用者へのアクセスビリティを高めるため、理研R-CCSと協議の上、「富岳」サポートサイトのZendeskにFAQとして掲載することを決定した。今後は、中級コースのさらなる拡充、QA集のZendesk FAQへの移行、「富岳」ポータルサイトにおけるセミナー動画の掲載、「富岳」を利用したハンズオンの実施等を目指す。
HPCで典型的なプログラミング技法の習得を目的とするHPCプログラミングセミナー(座学)は、2022年度には10回開催した。 新型コロナウイルス感染症の感染状況を確認した上で、2022年度は従来実施してきた会場開催を再開した(2回開催)。前年度実施したオンライン開催も継続した (8回開催。1回あたり1テーマ)。プログラミング言語 (Fortran、C/C++) の基礎は習得済みの初学者から小規模の並列計算の実行経験者までを想定し、本格的なHPC向けプログラミングを学習するために必要な知識を習得できるよう工夫した。
各分野で利用者が多いOSSの利用技術の習得を目的とするHPCアプリ講習会は、2022年度は材料系のOSSを対象に2回開催し(全てオンライン)、「富岳」実機にアクセスするハンズオンを実施した。内容としては、参加者が「富岳」でのジョブ実行やOSS利用の典型例を学習できるよう工夫した。特に、「富岳」Open OnDemandやワークフロー・ツールWHEELの利用といった計算機の利活用促進に繋がるツールの利用を試みた。
利用者が多いOSS等に関する利用事例、「富岳」を始めとするHPCIの計算機の利用情報、最新の研究動向などの共有を目的とし、材料系ワークショップ(物性・材料分野向け)及びCAEワークショップ(CAE分野向け)を開催した。2022年度は材料系ワークショップを2回、CAEワークショップを1回開催した。材料系ワークショップは、新型コロナウイルス感染症の感染状況を確認した上で、会場/オンラインのハイブリット形式の開催とした。内容としては、ポスト「富岳」を見据えた計算科学の動向や計算と計測のデータ統合による材料開発のアプローチを取り上げた。また、CAEワークショップはオンラインで開催し、「富岳」におけるOSSの利用事例やCAEシミュレーションの最新動向を取り上げた。これらのワークショップでは産業界からの参加が約6割と多かった。
2022年度は、新型コロナウイルス感染症の感染状況を確認した上で、講習会・セミナー・ワークショップの一部については、従来の会場開催の再開、あるいは会場/オンラインのハイブリット形式での開催を実施した。会場開催にあたり、会場で定められたガイドラインを遵守することで、感染症対策に配慮した。一方で、オンラインでの開催も継続した。今後は、新型コロナウイルス感染症の状況を注視しつつ、講習会・セミナー・ワークショップそれぞれの趣旨と主な参加者層に配慮し、会場及びオンラインの形式を柔軟に取り入れた開催形式を検討してゆきたい。
主催した講習会・セミナーでは参加者に対してアンケート調査を実施した。2022年度の回答数は計561件で、その中で内容の満足度を尋ねた項目では、「満足」と「ほぼ満足」が合わせて94%を占めており、「不満」という回答はほぼ無く、高い評価を得た(図1)。この結果から、RISTが開催する講習会等は、概ね利用者のニーズに応えていると考えている。一方、少ないながらも「やや不満」という回答があることから、講習会等の内容やアンケート結果を分析して問題点を抽出し、来年度以降の改善に活用したいと考えている。