3 「富岳」の利用者選定

3-3 利用状況

3-3-1 「富岳」全体

1. 2022年度に実施された課題の利用実績

「富岳」は2021年3月9日の共用開始以降順調に運用されている。2022年度には公募による一般利用、産業利用の定期募集課題である令和3年度(2021年度)B期、令和4年度(2022年度)A期課題及び同B期課題及び随時募集課題に利用されるとともに、国が選定する「富岳」成果創出加速プログラムの課題、「富岳」政策対応利用課題及び「富岳」Society 5.0推進利用課題に利用された。

また、2022年度においては世界的なエネルギー危機、及びそれに伴うエネルギー価格の急激な上昇により、「富岳」の光熱費が不足する見込みとなった。このため7月27日から11月8日まで「富岳」全体の約1/3の計算ノードを停止するとともに、今後もこのような事態が継続することが予想されるため、「富岳」が持つ省電力機能の積極的な活用や利用者への省電力利用への協力依頼に取り組んだ。

なお、急遽計算ノードの約1/3を停止することとなったため、利用期間内に計算を完了することが難しいと想定される2022年度上期末(9月末)で終了する課題(令和3年度(2021年度)B期課題10件、9月末終了の一般機動的課題2件)については、利用期間を11月11日まで延長する措置をとった。

2022年度の一般利用及び産業利用課題の利用実績を表1、表2に示す。なお、利用実績は2022年度に実施された課題を対象としているため、年度を跨ぐ課題、具体的には2022年度内に申請され、2023年度に入ってから利用を開始された課題は集計に含まない。

表1 2022年度 一般利用、産業利用(定期募集課題)利用実績
表2 2022年度 一般利用、産業利用(随時募集課題)利用実績
表2 2022年度 一般利用、産業利用(随時募集課題)利用実績

「富岳」成果創出加速プログラムの課題、「富岳」政策対応利用課題及び「富岳」Society5.0推進利用課題の2022年度の利用実績を表3、表4、表5に示す。

表3 2022年度 「富岳」成果創出加速プログラム 利用実績
表4 2022年度 「富岳」政策対応利用課題 利用実績
表5 2022年度 「富岳」Society 5.0推進利用課題 利用実績

なお、一般利用、産業利用、「富岳」成果創出加速プログラム、「富岳」政策対応利用及び「富岳」Society 5.0推進利用の各課題の利用実績については、巻末の参考2を参照されたい。

また、2022年度の「富岳」全体の利用実績月別推移は図1に示す通りである。2022年度の年度末利用実績は92.7%となった。

図1 2022年度 「富岳」全体のシステム利用実績(資源量)の月別推移
(調整・高度化・利用拡大を除く)
2. 課題参加者数

2022年度に実施された課題(調整・高度化・利用拡大を除く)における参加者数を表6に示す。年度合計は2,916名となり、2021年度の2,321名から大幅に増加した。うち、「富岳」成果創出加速プログラムの課題、「富岳」政策対応利用課題及び「富岳」Society 5.0推進利用課題の課題参加者は、それぞれ973名、82名、70名でこれらも増加しており、全体の約4割を占めている。

表6 2022年度実施課題の参加者数
表6 2022年度実施課題の参加者数

3-3-2 一般利用(一般課題)

1. システム利用実績

2022年度の一般課題における月別のシステム利用実績の推移を図2、図3に示す。上期は令和3年度(2021年度)B期課題と令和4年度(2022年度)A期課題が実施され、下期は同A期課題に加え、令和4年度(2022年度)B期課題が実施された。また、随時募集課題も継続して実施された。

2022年度の上期の利用においては、前半から順調に利用が進んだが、先述の一部計算ノード停止により、期末の累積では74.4%の利用実績に留まった。下期は、令和3年度(2021年度)B期課題の期間延長による利用、令和4年度(2022年度)A期課題に加え、同B期課題の利用が開始された。10月は計算ノードの一部停止の影響や期初の立ち上がりの鈍さから利用が低迷したが、11月以降は高い水準の利用実績を維持し、期末の累積の利用実績は94.8%となった。なお、超過利用の制度(*)は「富岳」においても引き続き適用している。

(*)利用率改善策として割当資源量を使い切った課題を対象に、ジョブの実行優先度を下げ、超過利用を認める制度。「京」の第9回選定委員会(2016年2月4日)で承認。

図2 システム利用実績(資源量)の月別推移(2022年上期)[一般利用(一般課題)]
図3 システム利用実績(資源量)の月別推移(2022年下期)[一般利用(一般課題)]
2. 分野別利用実績

一般課題(随時募集課題を含む)のシステム利用実績(資源量)における分野別比率を図4に示す。

図4 システム利用実績(資源量)の分野別比率(2022年度)[一般利用(一般課題)、随時募集を含む]
図4 システム利用実績(資源量)の分野別比率(2022年度)
[一般利用(一般課題)、随時募集を含む]

3-3-3 一般利用(若手課題)

1. システム利用実績

2022年度の若手課題における月別のシステム利用実績の推移を図5、図6に示す。若手課題の上期、下期実施状況については、一般課題と同様である。

2022年度の上期の利用においては、期初の4月、5月の利用が進まず、また一般課題同様に一部計算ノード停止により利用が伸び悩み、期末の累積は55.3%の利用実績であった。下期は、一般課題同様の理由で10月の利用は低迷したが、11月以降は若干の高低はあるが高い水準で利用され、期末の累積の利用実績は92.3%となった。

図5 システム利用実績(資源量)の月別推移(2022年上期)[一般利用(若手課題)]
図6 システム利用実績(資源量)の月別推移(2022年下期)[一般利用(若手課題)]
2. 分野別利用実績

若手課題(随時募集課題を含む)のシステム利用実績(資源量)における分野別比率を図7に示す。

図7 システム利用実績(資源量)の分野別比率(2022年度)[一般利用(若手課題)、随時募集を含む]
図7 システム利用実績(資源量)の分野別比率(2022年度)
[一般利用(若手課題)、随時募集を含む]

3-3-4 産業利用(産業課題)

1. システム利用実績

2022年度の産業課題における月別のシステム利用実績の推移を図8、図9に示す。産業課題の上期、下期実施状況については、一般課題と同様である。

上期の利用においては、利用の立ち上がりが遅く、また後半は一部計算ノード停止の影響で伸び悩み、期末の累積は45.4%の利用実績に留まった。下期については、令和4年度(2022年度)B期課題の立ち上がりが遅かったが、同A期課題が平均的な利用となり、期末の利用実績は79.6%まで回復した。

図8 システム利用実績(資源量)の月別推移(2022年上期)[産業利用(産業課題)]
図9 システム利用実績(資源量)の月別推移(2022年下期)[産業利用(産業課題)]
2. 分野別利用実績

産業課題(随時募集課題を含む)のシステム利用実績(資源量)における分野別比率を図10に示す。

図10 システム利用実績(資源量)の分野別比率(2022年度)[産業利用(産業課題)、随時募集を含む]
図10 システム利用実績(資源量)の分野別比率(2022年度)
[産業利用(産業課題)、随時募集を含む]

3-3-5 成果創出加速(成果創出加速プログラム)

1. システム利用実績

2022年度の「富岳」成果創出加速プログラムの課題における月別のシステム利用実績の推移を図11、図12に示す。2022年度に実施された成果創出加速課題22件のうち、19件が実施最終年度となることもあり、上期、下期とも活発な利用が続いた。期末の累積の利用実績は、上期が108.2%、下期が112.3%と非常に高いものとなった。100%を超える利用実績は、一般課題で記述した超過利用の制度の利用によるものである。

また、2022年度の「富岳」成果創出加速課題の実施においては、年度初に閑散期利用促進の一環として特別運用(**)を実施した。

(**) 「富岳」利用の比較的閑散期にあたる4月、5月の2か月間に、「富岳」成果創出加速課題の評価済資源量と配分資源量の差を上限値として、低優先度でジョブ実行を可とする運用。閑散期の利用促進を目的とした運用ルールとして実施(第5回選定委員会(2022年2月7日)で報告)。特別運用により利用できる資源量は配分資源量として扱わない(利用できることを保証するものではない)が、消費した資源量は利用実績として扱う。

なお、3-2-1の3.項に記載した通り、2022年度においては、一般利用、産業利用で未割当となった計算資源を有効活用するため、「富岳」成果創出加速プログラムに追加配分を実施した。具体的には2022年度上期に約1,910万ノード時間、下期には約490万ノード時間、合計で2,400万ノード時間の追加配分を行った。図11、図12に示す利用実績の割合(累積)は、年度途中の追加配分を含む上期、下期の各期の合計配分資源量を分母としているため、相対的に前半の割合は低く表現されている。月別の利用実績についても、その時点での配分されている資源量に基づき利用されているため、前半は低くなっている。

図11 システム利用実績(資源量)の月別推移(2022年上期)[成果創出加速プログラム]
図12 システム利用実績(資源量)の月別推移(2022年下期)[成果創出加速プログラム]
2. 分野別利用実績

「富岳」成果創出加速プログラムの課題は、実施体制として4つの領域に分類して推進されている(3-2-2項の表6参照)が、一般利用、産業利用に適用している分野別で集計した場合、システム利用実績(資源量)の分野別比率は図13に示す通りである。

図13 システム利用実績(資源量)の分野別比率(2022年度)[成果創出加速プログラム]
図13 システム利用実績(資源量)の分野別比率(2022年度)[成果創出加速プログラム]

3-3-6 政策対応(政策対応利用課題)

1. システム利用実績

2022年度の政策対応利用課題の利用は3件とも4月当初から開始され、月別のシステム利用実績の推移は図14、図15に示す通りである。上期の立ち上がりは遅かったが上期後半及び下期半ばに集中的に進み、期末の累積の利用実績は、上期が91.8%、下期が93.3%となった。

なお、政策対応の計算資源は提供可能資源量の枠外として定義されている。

図14 システム利用実績(資源量)の月別推移(2022年上期)[政策対応利用課題]
図15 システム利用実績(資源量)の月別推移(2022年下期)[政策対応利用課題]
2. 分野別利用実績

2022年度の政策対応利用課題は、一般利用、産業利用に適用している分野に分類した場合、3件とも「環境・防災・減災」に属する課題であった。

3-3-7 Society 5.0推進(Society 5.0推進利用課題)

1. システム利用実績

2022年度のSociety 5.0推進利用課題の利用は7月から開始され、月別のシステム利用実績の推移は図16、図17に示す通りである。上期の利用はほぼ進まなかったが、下期後半に集中的に利用が進み、下期末の累積の利用実績は、100.0%となった。

なお、Society 5.0推進の計算資源は提供可能資源量の枠外として定義されているが、産業界のコンソーシアムによる利用が想定されるため、産業利用の一環として扱われる。

図16 システム利用実績(資源量)の月別推移(2022年上期)[Society 5.0推進利用課題]
図17 システム利用実績(資源量)の月別推移(2022年下期)[Society 5.0推進利用課題]
2. 分野別利用実績

2022年度のSociety 5.0推進利用課題は、一般利用、産業利用に適用している分野に分類した場合、「バイオ・ライフ」に属する課題であった。