3 「富岳」の利用者選定

3-3 利用状況

3-3-1 「富岳」全体

1. 2021年度に実施された課題の利用実績

「富岳」の共用は2021年3月9日に前倒しして開始された。このため、一般利用、産業利用の定期募集課題である令和3年度(2021年度)A期課題は利用開始日を同日に前倒しして利用を開始した。なお、A期募集においては、9月末までを利用期間とする利用促進課題が併せて開始された。また、令和3年度(2021年度)B期課題については、「富岳」における早期の成果創出を目的として、利用開始日を10月1日から1か月前倒しし、9月1日に利用を開始した。

随時募集課題についても3月9日の共用開始日から申請の受付を開始した。

2021年度の利用実績を表1、表2に示す。なお、利用実績は2021年度に実施された課題を対象としているため、年度を跨ぐ課題、具体的には2021年度内に申請され、2022年度に入ってから利用を開始された課題は集計に含まない。(例として、一般試行課題は2020年度末申請分と2021年度申請分を合わせると62件であるが、2021年度末に申請され、2022年度に入ってから利用を開始した課題5件は2021年度利用実績には含まず、57件である。)

表1 2021年度 一般利用、産業利用(定期募集課題)利用実績
表2 2021年度 一般利用、産業利用(随時募集課題)利用実績
表2 2021年度 一般利用、産業利用(随時募集課題)利用実績

また、「富岳」成果創出加速プログラムの課題及び「富岳」政策対応利用課題は、2020年度から年度単位の利用が開始されており、2020年度課題は3月31日まで利用、2021年度課題は4月1日から利用が開始された。2021年度の利用実績を表3、表4に示す。

表3 2021年度 「富岳」成果創出加速プログラム 利用実績
表4 2021年度 「富岳」政策対応利用課題 利用実績

なお、一般利用、産業利用、成果創出加速及び政策対応の各課題の利用実績については、巻末の参考2を参照されたい。

また、2021年度の「富岳」全体の利用実績月別推移は図1に示す通りである。

図1 2021年度 「富岳」全体のシステム利用実績(資源量)の月別推移
(調整・高度化・利用拡大を除く)
2. 課題参加者数

2021年度に実施された課題(調整・高度化・利用拡大を除く)における参加者数を表5に示す。年度合計は2,321名となり、2020年度の1,798名から大幅に増加した。うち、「富岳」成果創出加速プログラムの課題及び「富岳」政策対応利用課題の課題参加者は、それぞれ890名、72名で、全体の約4割を占めている。

表5 2021年度実施課題の参加者数
表5 2021年度実施課題の参加者数

3-3-2 一般利用(一般課題)

1. システム利用実績

2021年度の一般課題における月別のシステム利用実績の推移を図2、図3に示す。2021年度は「富岳」の共用開始直後の利用となり、上期は令和3年度(2021年度)A期の通年課題と利用促進課題が実施され、下期はA期課題に加え、B期課題が実施された。また、随時募集課題は共用開始直後から申請を受け付け、実施された。なお、利用促進課題については、一般利用(一般課題、若手課題)、産業利用の区別のない課題として設定されたため、その利用実績は3-3-5項に示すこととする。

上期の利用においては、共用開始直後であることから、前半の利用が伸び悩んだが、期末には累積で95.7%の利用実績となった。下期は、B期課題の利用が開始され、平均的な利用実績を維持し、期末には100%を超える利用実績となった。100%を超える利用実績は、「京」で実施してきた超過利用の制度(*)を「富岳」においても引き続き適用しているためである。

(*)利用率改善策として割当資源量を使い切った課題を対象に、ジョブの実行優先度を下げ、超過利用を認める制度。2016年2月4日の選定委員会で承認。

図2 システム利用実績(資源量)の月別推移(2021年上期)[一般利用(一般課題)]
図3 システム利用実績(資源量)の月別推移(2021年下期)[一般利用(一般課題)]
2. 分野別利用実績

一般課題(随時募集課題を含む)のシステム利用実績(資源量)における分野別比率を図4に示す。

図4 システム利用実績(資源量)の分野別比率(2021年度)<br>[一般利用(一般課題)、随時募集を含む]
図4 システム利用実績(資源量)の分野別比率(2021年度)
[一般利用(一般課題)、随時募集を含む]

3-3-3 一般利用(若手課題)

1. システム利用実績

2021年度の若手課題における月別のシステム利用実績の推移を図5、図6に示す。若手課題の上期、下期実施状況については、一般課題と同様である。

上期の利用においては、一般課題同様に共用開始直後であることから、前半の利用が伸び悩み、期末の累積は56.1%の利用実績であった。下期についても、B期課題の利用が前半好調であったが、後半の伸びを欠き、期末の利用実績は77.9%に止まった。

図5 システム利用実績(資源量)の月別推移(2021年上期)[一般利用(若手課題)]
図6 システム利用実績(資源量)の月別推移(2021年下期)[一般利用(若手課題)]
2. 分野別利用実績

若手課題(随時募集課題を含む)のシステム利用実績(資源量)における分野別比率を図7に示す。

図7 システム利用実績(資源量)の分野別比率(2021年度)<br>[一般利用(若手課題)、随時募集を含む]
図7 システム利用実績(資源量)の分野別比率(2021年度)
[一般利用(若手課題)、随時募集を含む]

3-3-4 産業利用(産業課題)

1. システム利用実績

2021年度の産業課題における月別のシステム利用実績の推移を図8、図9に示す。産業課題の上期、下期実施状況については、一般課題と同様である。

上期の利用においては、共用開始直後であることから、利用の立ち上がりが遅く、期末の累積は70.9%の利用実績であった。下期についても、B期課題の立ち上がりが遅かったが、A期課題が平均的な利用となり、期末の利用実績は79.3%まで回復した。

図8 システム利用実績(資源量)の月別推移(2021年上期)[産業利用(産業課題)]
図9 システム利用実績(資源量)の月別推移(2021年下期)[産業利用(産業課題)]
2. 分野別利用実績

産業課題(随時募集課題を含む)のシステム利用実績(資源量)における分野別比率を図10に示す。

図10 システム利用実績(資源量)の分野別比率(2021年度)<br>[産業利用(産業課題)、随時募集を含む]
図10 システム利用実績(資源量)の分野別比率(2021年度)
[産業利用(産業課題)、随時募集を含む]

3-3-5 利用促進課題

1. システム利用実績

2021年度の利用促進課題における月別のシステム利用実績の推移を図11に示す。利用促進課題は上期のみ半年間の課題として実施されたが、共用開始直後であることから、利用が伸びず、期末の累積は44.6%の利用実績に止まった。

図11 システム利用実績(資源量)の月別推移(2021年上期)[利用促進課題]
2. 分野別利用実績

利用促進課題のシステム利用実績(資源量)における分野別比率を図12に示す。

図12 システム利用実績(資源量)の分野別比率(2021年度上期)<br>[利用促進課題]
図12 システム利用実績(資源量)の分野別比率(2021年度上期)
[利用促進課題]

3-3-6 成果創出加速(成果創出加速プログラム)

1. システム利用実績

2021年度の「富岳」成果創出加速プログラムの課題における月別のシステム利用実績の推移を図13、図14に示す。上期、下期とも堅調な利用が続き、期末の累積は102.4%の利用実績であった。100%を超える利用実績は、一般課題と同様に前述の超過利用の制度の利用によるものである。

なお、3-2-1項(3)に記載した通り、2021年度においては、一般利用、産業利用で未割当となった計算資源を有効活用するため、「富岳」成果創出加速プログラムに追加配分を実施した。具体的には2021年度上期に約5,000万ノード時間、下期には約2,900万ノード時間と約1,600万ノード時間の2回に分けて資源の追加配分を行った。図13、図14に示す利用実績の割合(累積)は、追加配分を含む上期、下期の各期の合計配分資源量を分母としているため、相対的に前半の割合は低く表現されている。月別の利用実績についても、その時点での配分されている資源量に基づき利用されているため、前半は低くなっている。

図13 システム利用実績(資源量)の月別推移(2021年上期)[成果創出加速プログラム]
図14 システム利用実績(資源量)の月別推移(2021年下期)[成果創出加速プログラム]
2. 分野別利用実績

「富岳」成果創出加速プログラムの課題は、実施体制として4つの領域に分類して推進されている(3-2-2項の表6参照)が、一般利用、産業利用に適用している分野別で集計した場合、システム利用実績(資源量)の分野別比率は図15に示す通りである。

図15 システム利用実績(資源量)の分野別比率(2021年度)<br>[成果創出加速プログラム]
図15 システム利用実績(資源量)の分野別比率(2021年度)
[成果創出加速プログラム]

3-3-7 政策対応(政策対応利用課題)

1. システム利用実績

2021年度の政策対応利用課題の利用は7月から開始され、月別のシステム利用実績の推移は図16、図17に示す通りである。上期及び下期前半は利用が進まなかったが、下期半ばに集中的に進み、期末の累積は97.7%の利用実績であった。

政策対応の計算資源は提供可能資源量の枠外として定義されているが、3-2-1項(3)に記載した通り、2021年度においては、一般利用、産業利用で未割当となった計算資源を有効活用するため、政策対応利用課題に枠内の資源として約2,200万ノード時間を配分した。

図16 システム利用実績(資源量)の月別推移(2021年上期)[政策対応利用課題]
図17 システム利用実績(資源量)の月別推移(2021年下期)[政策対応利用課題]
2. 分野別利用実績

2021年度の政策対応利用課題は、一般利用、産業利用に適用している分野に分類した場合、すべて「環境・防災・減災」に属する課題であった。