3 「富岳」の利用者選定
3-1 「富岳」における計算資源の利用と利用研究課題の種類
「富岳」における計算資源の利用については、文部科学省により「スーパーコンピュータ「富岳」利活用促進の基本方針」（2020年7月17日）に基本的な考え方が示されている。この基本方針では、「富岳」の用途を、①一般利用、②産業利用、③成果創出加速、④調整・高度化・利用拡大、⑤政策対応、の5つに分類し、それぞれの用途毎に、計算資源を配分することとしている（図1参照）。
以下に、各々の用途に対する計算資源の配分、また、利用研究課題の種類を示す。
図1 「富岳」全体の資源配分
3-1-1 計算資源の配分
1. 一般利用
一般利用は主としてアカデミアによる利用を想定しており、公募により「富岳」の機能・性能を有効に活用する、幅広い研究課題を科学的見地から審査した上で採択される。また、人材育成の観点から、若手研究者が利用しやすい課題種類を設けている。一般利用の課題採択にあたっては、選定委員会における議論を踏まえて設定される重点分野(*)に留意することとしている。一般利用の公募には、年2回の定期募集（A期、B期）に加え、随時応募を受け付ける随時募集がある。
共用開始以降の一般利用に対する計算資源の配分は、「富岳」の利用可能資源量(**)の40％程度である。
（*）重点分野
重点分野は政府の方針等を踏まえて年度ごとに決定するとともに、採択の際に優位性を持たせる等当該研究分野の推進を図るものである。令和3年度（2021年度）A期募集に設定された重点分野は「感染症対策に資する研究開発」と「次世代コンピューティングに資する基盤研究開発」である。また、令和3年度（2021年度）B期募集においても、これら2つの重点分野設定を継続する。
（**）「富岳」の利用可能資源量
「富岳」の利用可能資源量は、「富岳」の物理的な計算資源量の95％（計画停止や保守等で停止する期間を除く稼働率）に、ジョブの充填率を考慮した配分率を乗じた資源量であり、R-CCSにより決定される。2021年度の配分率は88％である。
2. 産業利用
産業利用は産業界による利用を想定しており、公募により「富岳」の機能・性能を有効に活用する、幅広い課題を科学的、社会経済的見地から審査した上で採択される。また、Society 5.0の実現を先導する研究基盤として「富岳」を活用し、産学官が一体となり、社会的課題の解決に直結する成果の創出を早期に目指す課題種類（「富岳」Society 5.0推進利用課題）を設けている。産業利用の公募については、Society 5.0推進利用課題を除き、一般利用と同様である。
共用開始以降の産業利用に対する計算資源の配分は、「富岳」の利用可能資源量の10％程度である。加えて、Society 5.0推進利用課題に対する計算資源の配分として枠外から5％程度が想定されている。
3. 成果創出加速
成果創出加速は特に科学的・社会的課題の解決に直結する成果の創出が早期に見込める研究課題を実施する。「富岳」成果創出加速プログラムで採択された課題が使用する。
2021年度の成果創出加速に対する計算資源の配分は、「富岳」の利用可能資源量の40％程度である。
4. 調整・高度化・利用拡大
「調整」に関しては、「富岳」の運用機関であるR-CCSが中心となって、安定運用のためのシステム調整に必要な取組を実施する。特に、運用初期は、「富岳」が使いやすいシステムになることを保証する観点から、柔軟な計算資源配分を実施する。「調整」に関する計算資源の配分は、「富岳」の物理的な計算資源量において「計画停止や保守等で停止する期間」として計上した5%程度をこれに充てる。
「高度化・利用拡大」に関しては、R-CCSが中心となり、ユーザ利用支援のための研究開発、データ科学・AI分野を含めた幅広いユーザの利用に資する高度化研究・利用支援、ユーザ拡大及び計算科学の先導的研究開発を実施する。
2021年度の計算資源の配分は、「高度化・利用拡大」に関して、「富岳」の利用可能資源量の10％程度である。
5. 政策対応
政策的に重要または緊急と認められる課題（例：感染症対策、気象・防災分野、国が実施する他の研究開発プロジェクトでの利用、計算分野の国際連携に資する利用等）がより柔軟に利用できる枠組みで、「富岳」政策対応利用課題が使用する。
2021年度の政策対応に対する計算資源の配分は、「富岳」の利用可能資源量の枠外である。
3-1-2 利用研究課題の種類
「富岳」の利用研究課題の種類を図2に示す。「富岳」の利用研究課題には、登録機関が広く一般から公募し選定する課題と、国等が選定する課題がある。公募する課題としては、一般利用、産業利用の計算資源に対して、それぞれ定期募集する課題と随時募集する課題が設定されている。定期募集する課題には、一般課題（若手課題を含む）と産業課題があり、年2回募集（A期/B期）が実施される。なお、令和3年度（2021年度）A期募集においては、利用期間を半年とする利用促進課題が設定された。随時募集する課題では、一般機動的課題（若手機動的課題を含む）と産業機動的課題が、また一般試行課題と産業試行課題が設けられている。試行課題（一般、産業とも）には、2022年1月から、「富岳」利用のすそ野拡大を目的とし、さらに簡易に利用できるファーストタッチオプションが追加された。また、随時募集する課題には、有償の利用に向けて、一般有償課題、一般試行有償課題と産業有償課題、産業試行有償課題が用意されている。
また、国等が選定する課題としては、成果創出加速の計算資源を利用する「富岳」成果創出加速プログラムの課題と政策対応の計算資源を利用する「富岳」政策対応利用課題及びSociety 5.0推進利用課題がある。
なお、調整・高度化・利用拡大の計算資源を利用する利用研究課題については、運用機関であるR-CCSが中心となって選定する。詳細は、2.章を参照されたい。
図2 「富岳」の利用研究課題の種類