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理研R-CCSとLRZ:HPCのエネルギー効率向上に向けた協力を強化 -直接水冷の推進、熱最適化・排熱回収技術の共同発展へ-
理研R-CCSとLRZ:HPCのエネルギー効率向上に向けた協力を強化 -直接水冷の推進、熱最適化・排熱回収技術の共同発展へ-
English理化学研究所 計算科学研究センター(R-CCS)とライプニッツ・スーパーコンピュータ・センター(Leibniz Supercomputing Centre:LRZ)は、SCA/HPCAsia2026大阪の開催式典において、次世代スーパーコンピュータのエネルギー効率および資源効率の高い運用の実現に向けて技術的情報や運用データなどの実践的知見の共有を目的とした協力覚書(MoU)を締結しました。
このたびのR-CCS松岡 聡センター長とLRZディーター・クランツルミュラーセンター長のMoU取り交わしにより、相互における直接温水冷却の運用・設計に関する知見、熱最適化、排熱回収、さらに計算ジョブのエネルギー配慮型スケジューリング(Energy-aware Scheduling)に関する経験とデータの交換を促進します。これにより、コンピュータ技術の比較分析を行うとともに、運用監視(モニタリング)やジョブ管理のためのツールを共同で高度化し、エネルギーを意識した運用手法の確立を目指します。
スーパーコンピュータは大規模な計算能力を提供する一方で、運用における電力消費が大きいことが課題です。R-CCSおよびLRZはいずれも、高性能システムに直接水冷方式を採用しています。直接水冷は空冷と比べて冷却効率が高く、運用エネルギーの削減に寄与します。また、システムから生じる排熱を近隣のオフィスや建物の暖房などに活用できる可能性があります。
現在、R-CCSではスーパーコンピュータ「富岳」、LRZではSuperMUC-NGのそれぞれの主力スーパーコンピュータの後継システム開発を行っています。日本の「富岳NEXT」とドイツの「Blue Lion」は構想こそ異なるものの、いずれもNVIDIAを含むアクセラレータの統合が想定されており、人工知能(AI)手法の活用を可能にする一方で、消費電力の増加が課題となります。
冷却水温の運用において、理研は現状約15℃を用いています。一方、LRZは最大40℃の温水運用を行い、目的に沿ったモニタリングを通じて高性能計算資源のエネルギー効率向上に取り組んできました。これにより、ハードウェアや計算ジョブの運用をエネルギー面からも最適化し、科学技術計算コードの円滑な実行に向けた改善を進めています。加えて、建物設備の調整も、水冷方式の活用とHPCシステムの省エネルギー運用を支えています。
本MoUに基づき、両センターは主に以下のテーマで協力を進めます。
- 直接温水冷却システムの利用・運用に関するデータ、知見、指標(メトリクス)の交換(特に高い稼働率・高負荷運用時を含む)
- 最適なシステム温度に関するリスク評価およびベンチマークの策定
- 高帯域ストレージ等に用いられる温度感受性部品を含む、各種ハードウェアコンポーネントの熱的挙動に関する研究
- エネルギー効率、計算性能、計算資源の可用性を両立する最適温度、いわゆる「熱的スイートスポット」の検討
- 計算・シミュレーションの実行計画をエネルギー面から最適化する実装戦略の評価と、対応する制御ツールの開発
- 排熱回収およびデータセンター周辺における地域熱供給(地域熱利用)の構築に向けた実現可能性調査
- エネルギー意識型の利用ルールを運用に取り込むためのユースケース評価と導入シナリオの策定
本協力は2030年まで継続する予定です。また、技術リソースの共有や、サポートおよびHPC運用担当者の交流(ワークショップ、相互訪問・交換滞在)も計画しています。これらと並行して、両センターの協力範囲をさらに拡大し、連携をより強固なものにするための検討も進めてまいります。
左からLRZディーター・クランツルミュラーセンター長、R-CCS松岡 聡センター長、R-CCS 庄司 文由運用技術部門長
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(2026年1月29日)
