スーパーコンピュータ「富岳」の開発
R-CCSは、スーパーコンピュータ「京」の後継機である「富岳」(2019年5月に名称決定)の開発・整備を、主体となって進めています。 ここでは、「富岳」の開発の概要をご紹介します。
「富岳」の目的
「富岳」は、社会や科学分野のさまざまな課題を解決することと、Society 5.0(仮想空間と現実空間を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会)の実現に貢献することを大きな目的としています。
「富岳」の特徴
- 幅広い用途に使える、世界最高レベルの計算機システムを実現します。
- 国際協力により、世界最先端で、かつ、国際標準となるような技術を開発します。
- 「京」で達成されたシミュレーション能力を受け継ぐとともに、ビッグデータや(AI 人工知能)への展開を目指します。
「富岳」の開発の進め方
上の目的を達成するため、幅広い分野に応用できるように、計算機システムとアプリケーションの協調的な設計(Co-design)によって開発を進めています。 多くのアプリケーションの中から選ばれた9つの「ターゲットアプリケーション」の特性に合わせてシステムを設計し、さらに、そのシステムに合わせてアプリケーションを最適化することで、アプリケーションの実効性能を最大で「京」の100倍にすることを目指しています。


「富岳」は、「京」と同じように、多数のCPUに計算を分担させるしくみの計算機です。CPUは、広く使われている既存のCPUを「富岳」のために大幅に改良して、高い演算性能と高い省電力性能をもたせたもので、ビッグデータやAIなどSociety 5.0に必要とされるアプリケーションで高い能力を発揮します。さらに、このCPU自体が世界標準として、クラウドやIoTにも使われる可能性を秘めています。 このCPU2個からなる単位をCMU、CMUを24個積み重ねたものをShelfと呼んでいます。Shelfを8個組み合わせて1個のラックが構成されます。


さまざまな計算を「富岳」で効率よく行えるようにするために、計算の目的や実行のしかたが異なる9つのアプリケーションが「ターゲットアプリケーション」に選ばれました。 これらが「富岳」で最大限働くようにするために、新しいアルゴリズムや実装方法の研究開発が進められています。
GENESIS | タンパク質の動きを計算 |
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Genomon | ゲノム解析 |
GAMERA | 地殻・都市の地震を計算 |
NICAM+LETKF | 観測データを融合した地球大気のシミュレーション |
NTChem | 分子の構造を解明 |
ADVENTURE | 大規模システムのシミュレーション |
RSDFT | 物質の特性を解明 |
FrontFlow/blue | 乱れのある流れや音響を計算 |
LQCD | 素粒子の振る舞いを計算 |
「富岳」のCPUと通信ネットワークは、AI の基本をなす深層学習のための計算に適しているため、「富岳」は世界でもトップクラスのAIマシンとなる見込みで、AIやデータサイエンスの研究に活躍すると期待されています。

AIを利用して実験や観測の結果とシミュレーション結果を融合させることで、より精度の高い予測を行うことができます。また、シミュレーション結果をデータとしてAIに「正解」を探してもらうこともできます。

アプリケーションの実効性能が上がることから、より「高解像度」「長時間」「大規模」「多数のケース」のシミュレーションが可能となり、身近な社会的課題の解決から、基礎科学の理解まで、さまざまなインパクトが期待されます。

「富岳」は「京」の施設や設備の一部を再利用して設置されますが、「京」に比べて消費電力が増加し、それに伴う排熱も増大する見込みのため、電気設備や冷却設備などを増強します。すでに、2019年5月から工事は始まっています。
※設備工事・設置レポートは、R-CCSのホームページやTwitterでご覧いただけます。

2019年6月、地下の免震ピットに運び込んだ冷却管をつなぎ合わせた。正確な位置決めのため、レーザーを使用。

2019年8月、計算機棟2階の高圧電気室に「富岳」用の変圧器を設置。
に収録されています。
