研究室へようこそ! 第1回

電気通信大学 大学院情報理工学研究科 山﨑研究室

研究室へようこそ!
2018年10月掲載
山﨑 匡 准教授
山﨑 匡 准教授
電気通信大学 大学院情報理工学研究科
Q: 先生はどんな研究をしているのですか?
A: 脳の研究はすごいスピードで進んでおり、脳の中の神経細胞のつながり方や、神経細胞が信号をやりとりするときの「ルール」は、かなりよくわかってきています。でも、たくさんの神経細胞が簡単な「ルール」で信号をやりとりするだけで、なぜ、私たちは、見たり、話したり、考えたりできるのでしょう? 不思議ですよね。私は、脳の情報処理の原理を知りたいと考え、シミュレーションによる研究を行っています。
研究テーマ1
人工小脳の構築
目標の1つは、小脳の「リアルタイムシミュレーション」です。小脳にある約690億個の神経細胞全部が行う1秒間の情報処理を、同じ1秒以内に計算したいのです。2018年2月には、海洋研究開発機構に置かれていた「暁光(ぎょうこう)」というスパコンを使い、約80億個の神経細胞からなる小脳のリアルタイムシミュレーションに成功しています。このシミュレーションでは、小脳が担当している眼球運動の学習を再現することができました。
研究テーマ2
全脳規模シミュレーション
もちろん、脳全体のシミュレーションは大きな目標です。「京」の後継機、ポスト「京」を使って、ほかの研究機関が構築した大脳皮質や大脳基底核と私が構築した小脳を接続して、シミュレーションを行う計画です。とても楽しみにしています。
ポスト「京」に搭載予定のCPU(中央演算装置)と同じ構造のCPUを用いたコンピュータ
ポスト「京」に搭載予定のCPU(中央演算装置)と同じ構造のCPUを用いたコンピュータを作製ずみ。これでプログラムをテストする予定。
研究テーマ3
リハビリへの応用
脳梗塞などの病気で、うまく体を動かせなくなることがありますね。脳と骨や筋肉をつないだシミュレーションを行うと、この病状を再現でき、さまざまなリハビリ法の効果を事前に確かめることもできるはずです。そこで、このような目的に合った脳-筋骨格系のモデルを開発しています。研究を通じて、患者さんの負担を少しでも減らすことができたらと考えています。
歩行困難者の歩行シミュレーションと実際の患者さんの様子。
 

教えて!先輩!!(Q&Aコーナー)

なぜこの研究室を選んだのですか?
スパコンが使えて、プログラミングもたくさんやれるからです。もともと、大規模な微分方程式の数値シミュレーションに興味があったのですが、それを脳の研究に使うところがおもしろそうだと思いました。(学部4年 古荘 克さん)
高校生のときにやっておくべきことは?
研究室は学部4年、修士1、2年の3年間を過ごす場所であり、就職するにせよ、研究者を目指すにせよ、その後の人生に大きな影響を与えます。大学を選ぶとき、大学全体のことしか調べない人が多いと思いますが、研究室についてよく調べることをお勧めします。ちなみに、電通大では、毎年7月と11月にオープンキャンパスが行われ、全研究室が研究紹介をします。興味のある人はぜひ来て下さい。(修士1年 吉村 英幸さん)

研究室プロフィール

電気通信大学の最寄り駅は、新宿から京王線特急で15分の調布駅。山﨑研究室は、緑に囲まれた西1号館の1階にあり、モノトーンで統一されたインテリアがすてきです。メンバーは学生さん5名、ポスドク(Postdoctoral Researcher。博士研究員のこと)の方が2名、秘書さん1名。研究室では、プログラムを書いたり、ゼミや実験をしたりするそうです。みんなとても仲良しで、和気あいあいとした雰囲気です。先生が「忙しいときは全力でがんばり、そうでないときは全力で緩む」という方針だからでしょうか。驚いたのは、学生さんたちがみんなお給料をもらっていること。先生が進めているプロジェクトの研究員として、ちゃんと結果を出しているからだそうです。学生さんが高性能のコンピュータを好きなだけ使えるというのも、すごい環境ですね。
山崎研究室のみなさん
山﨑研究室のみなさん
イタリアでの学会発表
学会発表
イタリアの学会でのポスター発表の様子。「修士になると当たり前のように海外の学会に行くのが、研究室のウリの1つです」と山﨑先生。
ゼミの風景
ゼミ
ゼミでは難しい言葉や式が飛び交っています。しかし、山﨑先生によれば、「みんな研究室に配属されてから脳の勉強を始めるんですよ」とのこと。
CPUを作る様子
実験
山﨑先生「CPUをつくっています。コンピュータの仕組みを電子回路レベルで理解しておくと、よいプログラムが書けます」

一日の過ごし方 ~研究室に入ったら~

古荘 航さん
修士2年
古荘 航さん
人工小脳がリアルタイムで情報を処理できるように、プログラムを最適化する研究をしています。プログラムを考えて書き、それを使って計算し、性能を確かめるという毎日です。自分のアイデアで計算が速くなったときは、うれしいです。山﨑先生は「きちんと結果を出せれば、どこで研究してもいい」という方針なので、ふだんは自宅で研究することもあります。でも、学会の前や論文提出の前は、土日も祝日も関係なく研究室に行き、朝から夕方まで先生の指導を受けながら準備をがんばります。
7:00-
起床
9:00-
研究
ふだんはこれよりゆっくり目に登校することも。自宅から研究室のコンピュータにアクセスできるので、早く登校しなくても研究はちゃんとできます。
12:30-
昼食
昼食はいつも学食で食べてます!
13:00-
研究
学会発表の前は、原稿を先生に見てもらって修正します。原稿は英語だし、何度も修正するので、連日朝から夕方までかかります。
17:00-
帰宅
夕食
20:00-
自由時間
プログラミングが好きなので、自由時間にも、研究とは関係のない「趣味のプログラミング」をしています。ゲームも好きです。
24:00-
入浴・就寝
この記事は「計算科学の世界」NO.17
に収録されています。
計算科学の世界 VOL.17(PDF:4.12MB)pdf