研究者に聞いてみよう! 第1回

粒子系シミュレータ研究チーム
牧野 淳一郎 チームリーダー

K computer Newsletter No.9 : 研究者に聞いてみよう!

牧野さんは岐阜県出身の天体物理学者です。東京大学の学生時代に、重力計算に特化したGRAPEシリーズ計算機の開発に携わり、以来、おもに理論やシミュレーションによる天体の形成・進化の研究や、計算アルゴリズムの研究に取り組んできました。牧野さんは、その功績によってスパコン界で最も権威ある賞の1つ「ゴードン・ベル賞」を7 回も受賞しています。AICSでは、1個ずつの粒子に数値をおいてシミュレーションを行う「粒子法」という計算手法を「京」で実現し、汎用性に富んだソフトウェアの開発に取り組んでいます。そんな牧野さんにお話を聞きました。
(兵庫県立宝塚北高等学校化学部一同)

  • Q.なぜ、天体物理学を研究しようと思ったのですか?
  • A.大学4年生のときに、新しい視点や、ほかの人がやっていないこと、できなかったことを大事に研究している指導者に出会い、大学院でその方といっしょに研究したことがとても楽しかったからです。いま思えば、天体物理学というよりは、その方と研究したいという気持ちが大きかったです。私と同じような動機で研究者になった人は、案外多いかもしれません。
  • Q.昔から科学に興味がありましたか?
  • A.父親がエンジニアだったので、その影響なのか、遺伝的なものなのかわかりませんが、小さいころから工作が好きで、中学生のときには、理論的な計算をして自分で設計した模型飛行機を飛ばしていました。
  • Q.子供のころの夢は、何でしたか?
  • A.大学に入ってからしばらくまでは、父親のように、何か物をつくるエンジニアになろうとしていました。
  • Q.高校のころに一番好きだった教科は何ですか?
  • A.数学です。自分なりに筋道を立てて考えてよいところがおもしろかったので。
  • Q.今の1日の生活リズムは、どのようなものですか?
  • A.だいたい10時にここ(AICS)に来て研究の仕事をして、6~7時には家に帰って少し仕事の続きをして・・・という感じですね。
  • Q.1日の睡眠時間は、どのくらい確保できますか?
  • A.私はちゃんと寝ないと仕事ができないので、少なくとも6時間は寝て、週末はもうちょっと寝て足りない分を補っています。
  • Q.研究以外に、趣味はありますか?
  • A.最近はいろいろな本を読むことですね。科学的なものとか哲学というよりは、もっと気軽な小説を読むことが多いです。
  • Q.研究をしていて、壁にぶつかったりすることはあるのですか?
  • A.計算機をつくったのに動かないなど、行き詰まることは割とよくあります。その場合は、何とか解決できるように努力しています。壁を乗り越えてうまくいったときは、達成感があります。
  • Q.モットーは何ですか?
  • A.モットーはむしろもたないようにしています。新しい現象に遭遇したときには、新しい考え方をしなければなりません。1つのものに固執して、今までの常識にとらわれてしまうと、逆に新しいものを見逃してしまいます。そのため、目の前のことに柔軟に対応できるように心掛けています。
  • Q.研究を進めるうえでの目標は何ですか?
  • A.これまでの計算機の性能を大幅に上回る後継機をつくり、さまざまな科学研究に貢献することです。

略歴:東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了。東京大学教養学部助手、同助教授、東京大学大学院理学系研究科助教授、国立天文台教授、東京工業大学理学研究流動機構教授を経て現職に。エクサスケール・スーパーコンピュータ開発プロジェクトにも参加している。

兵庫県立宝塚北高等学校化学部の皆さん

インタビューを終えて

一流の研究者に直接お話をうかがうことは、ふだんはできない経験です。研究の内容だけでなく、日常生活にも興味があったので、お話を聞けてとてもうれしく思いました。牧野さんは研究に取り組むだけでなく、科学者の立場から原発事故に迫った『原発事故と科学的方法』も執筆されています。この本についてもうかがい、人の暮らしを豊かにするのも、また安全を脅かすのも科学なのだということを実感しました。我々化学部には、研究者をめざす者も多いので、このことは肝に命じておかなければならないと強く思いました。お忙しい中、私たちのためにお時間をとっていただき、ありがとうございました。

(菅 優伍、木村 航、藤原 朋子、峯田 初音)