スパコンのことば -その1-
格子

スパコンのことば
2013年09月掲載

自動車の周りの空気の流れや気象の変化をシミュレーションするには、空間をすきまなく分割し、分割された要素ごとに計算することが必要です。その分割のために使われるのが「格子」です。ほかにも、地震波の伝わり方、細胞内の物質移動、材料の電子特性、さらには、クォークのふるまいまで、さまざまなシミュレーションが格子を使って行われます。

格子が細ければ細かいほど、シミュレーションの精度は上がりますが、計算量もどんどん増えます。計算量をなるべく抑えつつ精度をあげるには、計算法の開発ももちろんですが、格子のつくり方にも工夫が必要です。

多くのシミュレーションでは、空間(実際の空間のこともあれば、理論的な空間のこともあります)を直方体で一定間隔に区切る「構造格子」が使われています。構造格子は、つくるのも細かくするのも簡単だという特徴があります。

一方、自動車や地形のように複雑な形を扱う場合は、空間を四面体や三角柱、四角すいなどで区切る「非構造格子」が使われています。四面体などを使うと、同じ細かさなら直方体よりもなめらかに形状を再現できるからです。ただし非構造格子は、手作業でつくる部分があり、格子を細かくするために単位の立体を自動的に分割すると、形がひずんでしまうこともあります。

そこで、複雑現象統一的解法研究チームでは、段階的に構造格子を細かくする格子細分化技術を活用して、自動車のような複雑な形状でも短時間で格子を作成できる手法を採用し、改良を続けています。

シミュレーションの対象、精度、目的に応じて、どちらの格子をどの程度の細かさで使うべきかは違ってきます。格子のつくり方は、スパコンによるシミュレーションをうまく利用するためのカギを握っているのです。

自動車の周りの空間を区切るための格子
自動車の周りの空間を区切るための格子
自動車の周りの空間を区切るための格子
左は四面体を用いた非構造格子で、右は構造格子。右では、車に近づくにつれて格子を段階的に細かくすることで、構造格子のメリットを活かしつつ、形状を可能な限りなめらかに表現している。
この記事は「計算科学の世界」NO.6
に収録されています。
計算科学の世界 VOL.6(PDF:4.58MB)pdf