「特定高速電子計算機施設の共用の促進に関する基本的な方針」(平成23年文部科学省告示第120号)では、「施設利用研究の成果は、科学技術の振興を図るとともに、スーパーコンピュータの利用分野等に関する新たな知見を生かした特定高速電子計算機施設の更なる利用を促進する観点から、知的公共財として積極的に公表し、普及されるべきものである。」とされている。
この方針に従い、「京」及び「富岳」を中核とするHPCIでは、基本的に利用者に以下の要請を行っている。
2024年度は、「富岳」R5(2023)年度A期・B期定期募集課題(一般、若手、産業)のほか、機動的課題、試行課題等の利用報告書、計360件をHPCIポータルサイトに公開した(2023年度は「富岳」R4(2022)年度同課題の利用報告書、計247件)。
また、「京」及び「富岳」の成果公開対象課題(全1,124課題)のうち93課題(通算996課題)の成果公開の認定が行われた。
さらに、2015年9月から公開を開始した「HPCI利用研究成果集」(登録機関RIST発行の電子ジャーナル)は2024年6月に第9巻No.1(4編の論文[うち「京」課題関連1編]を収録)を、12月に第9巻No.2(1編の論文[同課題関連]を収録)を発行し、通算公開論文数は106編となった(2023年度から5件増)。
「京」及び「富岳」を含むHPCI全体の利用報告書のダウンロード(DL)総数は2014年7月の統計データ取得開始以降、2024年度末で通算750,656件となった。ただし、米国ネットワーク事業者による一時的な大量DLが含まれるため、その詳細については後述。なお、ダウンロードを行った企業は通算1,551社となり、その業種は東京証券取引所の33業種中32業種に及ぶ。
HPCI成果発表データベースに登録された「京」及び「富岳」に関する成果発表件数は、「京」一般利用枠では通算2,648件(うち査読付き論文数は833)、ポスト「京」研究開発枠(重点課題及び萌芽的課題)では通算3,159件(うち査読付き論文数は998)、戦略プログラムでは通算3,616件(うち査読付き論文数は630)、京調整高度化枠/「富岳」高度化利用拡大枠/新型コロナウイルス対策を目的とした「富岳」の優先的な試行的利用では通算1,117件(うち査読付き論文数は113)となった。また、「富岳」の成果発表件数が顕著に増加しており、「富岳」一般利用枠では通算972件(昨年574件)(うち査読付き論文数は424(昨年199))、「富岳」成果創出加速プログラムでは通算1,207件(昨年932件)(うち査読付き論文数は390(昨年238))となった(2025年3月31日時点、各成果件数には課題の種類間で重複がある)。以下の各項で、それぞれの詳細を記す。
2024年度は、「富岳」のR5年A期・B期課題のほか、機動的課題、試行課題、成果創出加速課題、政策対応利用課題等の利用報告書、計360件をHPCIポータルサイトに公開した。(2025年7月10日時点)
| 利用枠 | 課題数 | 公開数 |
|---|---|---|
| 「富岳」R5年A期・B期課題(一般、若手、産業) | 100 | 93 |
| 「富岳」機動的課題(一般、若手、産業) | 17 | 11 |
| 「富岳」試行課題(一般、産業) | 67 | 65 |
| 「富岳」試行課題(一般、産業)(ファーストタッチオプション) | 158 | 156 |
| 「富岳」有償課題(一般、産業) | 3 | 3 |
| 「富岳」試行有償課題(一般、産業) | 4 | 3 |
| 「富岳」一般試行課題(国際連携/NSCC) | 5 | 5 |
| 「富岳」成果創出加速課題 | 20 | 22 |
| 「富岳」政策対応利用課題 | 4 | 3 |
| 「富岳」Society5.0推進利用課題 | 1 | 1 |
| 合計 | 379 | 360 |
また、利用者等の利便性向上を目的として「利用報告書検索サイト」を運用・提供しており、現在公開されている全課題の利用報告書がWebブラウザ上にて検索可能である。本サイトはカテゴリー検索(課題番号、課題名、課題代表者、所属機関名、利用ソフトウェア、利用枠、実施期間、利用計算資源提供機関、研究分野の9項目)及び任意のキーワードによる検索機能を有し、利用報告書の高機能検索が可能である。
登録機関RISTが定める「HPCIシステム利用研究課題実施後の成果等の取扱いに関する基本的考え方」において、成果公開が義務付けられている課題は、課題実施終了後3年以内に、以下の4つのいずれかの方法により研究成果を公開することが義務付けられている。
成果公開が義務付けられている課題の代表者に対して課題実施終了後60日以内にa)~d)のどの方法で成果を公開するかの予定(又は実績)の申告を依頼している。本申告は、WEBを介したオンラインワークフロー管理システムである成果公開マネージメントシステム(PUMAS)を用いて行う。
登録機関RISTが定める前述の基本的考え方において、上記の公開成果の認定・審査は登録機関RIST理事長の下に設置されている利用研究課題審査委員会(以下、「課題審査委員会」という。)が行うことが定められている。上記a)、c)、d)については公開された成果の認定が課題審査委員会によって行われる。2024年度に開催された第10回及び第11回課題審査委員会で、「京」一般利用枠、ポスト「京」研究開発枠、及び「富岳」一般利用枠、「富岳」成果創出加速プログラム(全1,204課題)のうち93課題に対して成果公開の認定が行われた。課題枠別の内訳を表2に示す。
| 利用枠 | 終了年度 | 成果公開対象 課題数 |
認定課題数 |
|---|---|---|---|
| 「京」一般利用枠 | 2012 | 2 | - (2)* |
| 2013 | 77 | 0 (76) | |
| 2014 | 63 | 0 (62) | |
| 2015 | 74 | 2 (74)* | |
| 2016 | 78 | 1 (73) | |
| 2017 | 71 | 2 (67) | |
| 2018 | 63 | 2 (61) | |
| 2019 (共用終了8/16まで) |
35 | 1 (32) | |
| HPCI戦略プログラム | 2012 | 31 | - (31)* |
| 2013 | 25 | - (25)* | |
| 2014 | 25 | - (25)* | |
| 2015 | 25 | - (25)* | |
| ポスト「京」研究開発枠 | 2015 | 31 | - (31)* |
| 2016 | 56 | - (56)* | |
| 2017 | 60 | 0 (58) | |
| 2018 | 58 | 1 (56) | |
| 2019 | 58 | 4 (54) | |
| 「富岳」一般利用枠 | 2021 | 60 | 14 (41) |
| 2022 | 92 | 16 (38) | |
| 2023 | 105 | 38 (41) | |
| 「富岳」成果創出加速プログラム | 2020 | 20 | 1 (20) |
| 2021 | 22 | 2 (20) | |
| 2022 | 22 | 3 (15) | |
| 2023 | 20 | 6 (6) | |
| 総計 | 1,173 | 93 (989) | |
*全数認定済み
HPCI利用研究成果集は、一般のジャーナルの査読付き論文になりがたい課題の成果を公開論文化することを主たる目的としている。積極的にとらえれば、挑戦的な計算やその他の理由で計算が不成功に終わった場合や期待通りの結果が得られなかった場合でも、他の研究者の有益な情報になるように、その原因を詳細に記述することにより論文発表を行うことが出来る。これは一般のジャーナルには見られないユニークな特徴である。
2024年度は、第9巻No.1を2024年6月20日に、同No.2を同年12月23日に、それぞれ発行した。掲載論文はセクションA学術研究成果計3編、セクションB産業利用成果計2編の全5編(うち、「京」課題関連は2編)である。
公開論文の全ダウンロード数は、既知のBotによるものを除き、2025年3月31日時点で47,778回であり、そのうちダウンロード数トップの論文は2,709回であった。
HPCI利用研究分野別(図1)及び利用枠別(図2)の成果発表状況を表示する成果発表データベースを公開している。分野別と利用枠別の表示は、「表示オプション」ボタンで切り替える。
成果発表データベース登録アプリケーションには、DOI(Digital Object Identifier)番号によるDOIデータベースからのインポート機能(DOIインポート機能)やCSV一括登録機能も用意されている。DOIインポート機能は、利用者が入力した論文DOI番号をシステムがリアルタイムにDOIデータベースに問い合わせ、当該論文の属性を入力画面にインポートする機能である。またCSV一括登録機能は、利用者が手元に用意したCSVファイルをアップロードすることにより一度に複数の成果情報を登録できる機能である。
「京」及び「富岳」を含むHPCI全体の利用報告書のダウンロード(DL)総数は、2014年7月の統計データ取得開始以降、2024年度末で通算約750,656件となった。2024年度の年間DL数は約506,430件であり、前年度と比較して20倍を超えている。これは、7月度における463,557件もの短期間・大量DLに起因する。その99%は米国ネットワーク事業者2社経由による一時的なDLであり、その後のDL傾向についてウォッチングを続けている。図3にダウンロード数の月次変化を示す。2024年度は、上記の一時的な大量DLも含めて、月間2千件レベル以上のDLの多い状態が続き、現在に至っている。また、2018年度以降の実施課題の利用報告書のダウンロード数の割合が半分以上を占め、増加傾向にある。
図4 (上)に全ダウンロード数に対する課題枠別ダウンロード割合を示す。HPCI一般のダウンロード数が最も多く、次いで「京」産業利用(実証利用)、「京」一般、ポスト「京」重点課題の順に大きい。図4(下)には各課題枠における1課題当たりのダウンロード数を示す。「京」産業利用(実証利用)が最も大きく、次いで戦略プログラム、HPCI産業利用、ポスト「京」重点課題の順に大きい。「富岳」関連のダウンロード数はまだかなり少ないが、2023年度末と比較すると、「富岳」課題全般における1課題あたりのDL数は約20%増加しており今後も増加傾向が見込まれる。
図5に機関分類別ダウンロード割合を示す。ネットワーク事業サービスを通じて利用者が直接ダウンロードした場合(ネットワーク事業)以外では、大学等(390機関)、企業(1,551社)の順に多い。また、昨年度より5か国増の103の国と地域に亘っており、海外からの関心が高いことを示している。
なお、国外からのダウンロードが昨年度13.5%から67.7%と大幅に増加しているが、上記のとおり米国ネットワーク事業者による一時的な大量DLの影響である。
図6にHPCI利用企業及びダウンロード元企業の業種分布を示す。HPCI利用実績のある業種名は赤色で記載している。HPCI利用企業の業種数は、2024年度末時点の累積で、24業種(東京証券取引所の業種分類計33業種の73%)、また、同時点のダウンロード元企業の業種数は水産・農林業を除く32業種に及んでおり、HPCI利用実績のない企業(1,400社)からも幅広くダウンロードされている。以上のことから、我が国産業界における産業利用課題による成果への一層の関心の高まりとその普及が確認できる。
HPCI成果発表データベースに登録された「京」及び「富岳」に関する成果発表件数は、「京」一般利用枠では通算2,648件(うち査読付き論文数は833)、ポスト「京」研究開発枠(重点課題及び萌芽的課題)では通算3,159件(うち査読付き論文数は998)、戦略プログラムでは通算3,616件(うち査読付き論文数は630)、京調整高度化枠/「富岳」高度化利用拡大枠/新型コロナウイルス対策を目的とした「富岳」の優先的な試行的利用では通算1,117件(うち査読付き論文数は113)となった。また、「富岳」に関する成果発表件数については、「富岳」一般利用枠では通算972件(うち査読付き論文数は424)、「富岳」成果創出加速プログラムでは、通算1,207件(うち査読付き論文数は390)となった(2025年3月31日時点、各成果件数には課題の種類間で重複がある)。
図7は、(a) 査読付き論文、(b) 国際会議・シンポジウム、(c) 国内会議・シンポジウムの発表件数の年度推移を示したものである。
査読付き論文は、戦略プログラムが2015年度末に終了した後は、ポスト「京」研究開発枠重点課題関係が増えて、2017年度発表分以降はその割合が最も多くなっている。これは、「京」からポスト「京」に係る研究開発へと成果発表対象が移行していることを表している。2020年度からは「富岳」成果創出加速プログラム、「富岳」一般利用課題の成果論文発表が始まり、当初は「富岳」成果創出加速プログラム関係の成果論文の登録が最も多かったが、2023年度以降は「富岳」一般利用成果論文の登録が最も多くなっている。
国際会議・シンポジウム及び国内会議・シンポジウムについては、2015年度まではHPCI戦略プログラム関係の発表が突出しており、その後はそれを引き継ぐように、ポスト「京」研究開発重点課題関係の発表が最も多くなっている。また、査読付き論文の場合と同様に、2020年度に「富岳」関連の発表が始まり、当初は「富岳」成果創出加速プログラム関係が最も多かったが、2023年度以降は「富岳」一般利用関係の登録が最も多くなっている。
なお、図7(a)、(b)、(c)は、2025年3月31日時点で、HPCI成果発表データベースに登録されている件数を基に年度の推移を示しており、今後(特に直近年度は顕著に)増える傾向がある。
表3は、成果発表データベースとWeb of Scienceの両方に登録されている査読付き論文(論文の種別のうちArticleとReviewに限定)における高被引用論文の割合を日本全体の論文データと比較して示したものである。日本全体の論文の高被引用論文(Top10%)の割合は8.0%であるのに対して、「京」一般利用の成果論文における割合は14.8%と約1.9倍高い。重点的利用の課題についても萌芽的課題を除き日本全体よりも高い値を示し、「京」の利用研究成果として注目度の高い論文が産出されていることが分かる。「富岳」については、「富岳」成果創出加速プログラムの高被引用論文(Top10%)の割合は11.9%と日本全体の論文に比べて明らかに高い。
表3のカッコ内は、国際共著論文の数、及び国際共著論文の中での高被引用論文の割合を示す。一般に国際共著論文については高被引用論文の割合が高くなる傾向があるが、「京」、「富岳」においても同様に国際共著論文では高被引用論文の割合が高いことが分かる。国際共著論文についても、「京」一般利用のTop 10%の割合は21.8%であり、日本全体のデータ(14.8%)と比較して約1.5倍高くなっている。
(1) 論文種別のうち、ArticleとReviewに限定、HPCI計算機資源を用いた成果に限定、課題の種類間で重複あり。成果発表DBについては、2024/9/17時点で登録されていた、2023年までの発表論文。高被引用論文はInCiteデータ (2024/8/31)に基づく。
(2) 出典:文部科学省 科学技術・学術政策研究所、科学研究のベンチマーキング2023、調査資料-329、2023年8月、2019-2021年(平均、整数カウント)