我が国が世界に先駆けてその達成を目指すSociety 5.0においては、サイバー空間に社会のあらゆる要素をデジタルツインとして構築・解析し、最適な解(ソリューション)を求めた上で、フィジカル空間の制度、ビジネスデザイン、都市や地域の整備などに反映することにより社会を変革していく「サイバー空間とフィジカル空間の融合」が求められる。またここでサイバー空間においては、「最先端のAI技術と最先端のシミュレーション技術の融合」が求められる。この実現のために、⾼度な解析を可能とするデータ解析技術と大量のデータを扱うスパコンが必要となる。
「富岳」は、総合科学技術・イノベーション会議での「フラッグシップ2020プロジェクト(ポスト「京」の開発)」の中間評価において、「Society 5.0における研究開発基盤として生かされるよう他府省間や大学、研究機関間での連携をはかること、Society 5.0において重要となるビッグデータ、AI等のアプリケーションについても高い性能を有することを確認すること」と指摘されている。
このように、「富岳」は「サイバー空間とフィジカル空間の融合」を実証する研究開発基盤と位置づけられている。
さらに「富岳」は、後継機に向けて、スパコンを「計算のためのツール」から「社会変革のためのインフラ」へと着実に進化させることが期待されており、これにつながるように研究開発等に取り組んでいくことが必要である。
2024年度「富岳」Society 5.0推進拠点においては、今までの多角的な活動(「富岳」計算資源の利用促進、クラウド上での「富岳」環境を実現した「バーチャル富岳」の利用促進、「バーチャル富岳」に先行したアプリケーション利用サービスの実現、Society 5.0実現に向けたプラットフォームの構築・社会実装推進、理研産連本部との連携による大手企業との協創に向けた活動)に加え、「富岳」を利用した研究成果、社会実装例を、民間ユーザーの目線から分析・整理した「富岳ショーケース」の作成・公開や、社会実装に向けてのBarcellona Supercomputing Center (BSC)との連携を開始した。
「富岳」の産業利用促進やポテンシャルユーザーの開拓を目的として、「富岳」Society 5.0推進拠点が株式会社JSOLに業務委託する形で、「産業向け『富岳』利用マニュアル」、「ファーストタッチオプション利用ガイド」をそれぞれリリースしてきた。アプリの追加などにより、更新が必要となったため、引き続き株式会社JSOLに業務委託する形で一般財団法人高度情報科学技術研究機構(RIST)、一般財団法人計算科学振興財団(FOCUS)と調整して更新を随時行った。また新たに「アプリケーションサービス課題マニュアル」をリリースした。
創薬DXプラットフォーム(「富岳」を用いて創薬研究の最上流である標的探索から化合物取得に至るまで、AI創薬の各種要素技術を統合したプラットフォーム)のリード化合物創出フロー、創薬ターゲット探索フローに関してライフインテリジェンスコンソーシアム(LINC)による企業利用に向けた取り組みが開始した。また新たに中分子、高分子創薬に対応するAIの開発に着手した。
2025年日本国際博覧会(略称「大阪・関西万博」)において、総務省による政府アクションプラン「リモートセンシング技術による高精度データの収集・分析・配信技術の開発」においては、NICT、防災科研とともに「富岳」によるリアルタイム気象シミュレーションの提供を行うべく準備を進めた。2025年8月に本番実施予定。またテーマ事業「いのちを拡げる」(石黒 浩プロデューサー)においては、脳のシミュレーションとAIとを融合させた最先端研究の展示の準備を行った。またR-CCS独自に万博特設サイトをWeb上に設け、これらの活動を広く一般に対して行っている。
中長期的視点に立った産業界との画期的な価値創造に向け、R-CCSにおける最先端のシミュレーション技術と最先端のAI技術との融合、また理研全体のシーズとの組み合わせによる、産業界における将来的・抜本的なニーズ掘り起こしのディスカッションを大手複数社と継続している。またこの活動の一環で、「富岳」を利用した研究成果、社会実装例を、民間ユーザーの目線から分析・整理した「富岳ショーケース」を2025年4月1日からR-CCS「富岳」Society 5.0推進拠点のWeb Siteから公開すべく準備を完了した。また、Barcellona Supercomputing Center (BSC)のライフサイエンス系研究グループと「富岳」Society 5.0推進拠点との間でのビジネス目線での連携を開始した。また、ライフサイエンス系企業で頻繁に利用されている有償のグラフィクスソフトウエアMOEの国内代理店であるモルシス社と協議を進め、分子動力学計算アプリでありGENESISのインターフェースをMOE上に実装した。