「富岳」は2021年3月9日の共用開始以降順調に運用されている。2024年度には公募による一般利用、産業利用の定期募集課題である令和5年度(2023年度)B期、令和6年度(2024年度)A期課題及び同B期課題、また随時募集課題に利用されるとともに、国が選定する「富岳」成果創出加速プログラムの課題、「富岳」政策対応利用課題及び「富岳」Society 5.0推進利用課題に利用された。
2024年度においても世界的なエネルギー危機、及びそれに伴うエネルギー価格の急激な上昇により、「富岳」の光熱費が不足する懸念があったが、「富岳」が持つ省電力機能の積極的な活用や利用者への省電力利用への協力要請を一層進めることにより、計算ノードの一部停止などの措置は取られなかった。
なお、「富岳」の省電力利用への協力要請の一環として2023年度から「富岳ポイント」(*1)の運用が試行された。2024年度においては、「富岳ポイント」の付与期間及び優先実行可能期間を拡大して継続運用された。詳細は、「2. 「富岳」の運用」を参照されたい。
(*1)富岳ポイント
利用者が投入したジョブの消費エネルギーが平均的な基準よりも少ないジョブ実行に対してポイント(省エネルギー運用への貢献度をポイント化、「富岳ポイント」という)を付与し、ポイントに応じて優先的なジョブ実行を可能とする運用。2023年度は試行運用として、上期は4月1日~7月31日までをポイント付与期間とし、優先実行可能期間を8月10日~9月10日に設定、下期は10月1日~1月31日をポイント付与期間とし、優先実行可能期間を2月5日~3月11日に設定し実施した。
2024年度は、「富岳ポイント」の付与期間を通年とし、また優先実行可能期間も繁忙期(9月、3月)を除く期間として実施した。
また、これまで運用されていた利用率改善策として割当資源量を使い切った課題を対象に、ジョブの実行優先度を下げ、超過利用を認める制度(「京」の第9回選定委員会(2016年2月4日)で承認)に代わって、割当資源量を消費することなく低優先度でジョブ実行できる「低優先度ジョブ実行(spot)」(*2)の運用が開始され、通年に渡って随時利用可能となった。
(*2)低優先度ジョブ実行(spot)
従来は、課題採択時に配分された割当資源量を使い切った場合に低優先度でジョブ実行ができる制度の運用が行われていたが、「富岳」の利用促進のため、2024年度からこの制限が廃止され、割当資源量の残量に関わらず、通年で低優先度のジョブ実行が随時利用可能となった。なお、対象は有償利用を除く全ての課題である。
2024年度の一般利用及び産業利用課題の利用実績を表1、表2に示す。なお、利用実績は2024年度に実施された課題を対象としているため、年度を跨ぐ課題、具体的には2024年度内に申請され、2025年度に入ってから利用を開始された課題は集計に含まない。
「富岳」成果創出加速プログラムの課題、「富岳」政策対応利用課題及び「富岳」Society 5.0推進利用課題の2024年度の利用実績を表3、表4、表5に示す。
一般利用、産業利用、「富岳」成果創出加速プログラム、「富岳」政策対応利用及び「富岳」Society 5.0推進利用の各課題の利用実績については、巻末の参考2を参照されたい。
2024年度の「富岳」全体の利用実績月別推移(調整・高度化・利用拡大を除く)は図1に示す通りである。2024年度の年度末利用実績における消化率は92.1%で、2023年度の86.3%に比べ向上している。利用実績の絶対値も2023年度の1,029百万ノード時間に対し、2024年度は1,102百万ノード時間と拡大している。2024年度においてはジョブ充填率が2023年度に引き続き100%に設定されており(3-1-1参照)、利用可能資源量に大きな変化はない。年度当初(4月~6月)の課題実施開始期間の利用が順調に進捗したことが年度の消化率の向上に貢献したものと考えられる。
なお、2024年度においては10月にソフトウェア更新等による定期保守と2月に電源設備の法定点検によるシステム停止が実施された。
2024年度に実施された課題(調整・高度化・利用拡大を除く)における参加者数を表6に示す。年度合計は4,082名で、2023年度の3,521名から大幅に増加した。特に、一般課題における課題参加者の増加が大きく、試行課題(ファーストタッチオプションを含む)の課題数増が一因と考えられる。また、「富岳」成果創出加速プログラムの課題においても課題参加者が増加している。一方、「富岳」政策対応利用課題及び「富岳」Society 5.0推進利用課題の課題参加者は、前年度と同程度であった。
2024年度の一般課題における月別のシステム利用実績の推移を図2、図3に示す。上期は令和5年度(2023年度)B期課題と令和6年度(2024年度)A期課題が実施され、下期は同A期課題に加え、令和6年度(2024年度)B期課題が実施された。また、随時募集課題も継続して実施された。
2024年度の上期の利用においては、前半から順調に高い水準の利用が進み、7月は「富岳」全系規模実行(3-2-5項参照)の影響でやや低下したが、期末の累積では92.1%の利用実績となった。下期は、令和6年度(2024年度)A期課題に加え、同B期課題の利用が開始された。10月は定期保守による運転停止の影響が懸念されたが順調に利用が進み、2月には7月同様に「富岳」全系規模実行の影響でやや低下したものの期末の累積の利用実績は99.3%に達した。
一般課題(随時募集課題を含む)のシステム利用実績(資源量)における分野別比率を図4に示す。
2024年度の若手課題における月別のシステム利用実績の推移を図5、図6に示す。若手課題の上期、下期実施状況については、一般課題と同様である。
2024年度の上期の利用においては、期前半の利用がやや鈍く、7月には利用が大きく伸びたものの、期末の累積は80.0%に留まった。下期は高い水準で利用され、期末の累積の利用実績は104.7%に達した。
若手課題(随時募集課題を含む)のシステム利用実績(資源量)における分野別比率を図7に示す。
2024年度の産業課題における月別のシステム利用実績の推移を図8、図9に示す。産業課題の上期、下期実施状況については、一般課題と同様である。
上期の利用においては、前半から順調に高い水準の利用が進み、7月、8月にやや利用が減少したが、期末の累積では90.4%の利用実績となった。下期についても、10月を除き高い水準の利用が継続し、期末の利用実績は92.2%となった。
産業課題(随時募集課題を含む)のシステム利用実績(資源量)における分野別比率を図10に示す。
2024年度の「富岳」成果創出加速プログラムの課題における月別のシステム利用実績の推移を図11、図12に示す。2024年度においては、2021年度から継続する課題3件、及び2023年度に新たに採択された課題17件が2024年度も継続利用した。いずれの課題も継続利用であるため、上期当初から順調に利用が進み、期末の累積の利用実績97.6%と高い水準となった。下期も高い水準で安定した利用が続き、2月には「富岳」全系規模実行の影響でやや低下したものの期末の累積の利用実績は96.8%となった。
「富岳」成果創出加速プログラムの2023年度採択課題は、大規模連携課題、標準課題、標準課題(計算資源のみ)の3つの分類で推進されている(3-2-2項の表3参照)が、一般利用、産業利用に適用している分野別で集計した場合、システム利用実績(資源量)の分野別比率は図13に示す通りである。
2024年度の政策対応利用課題は年度当初3件の利用で始まり、8月以降新たに採択された1件の利用が始まった。月別のシステム利用実績の推移は図14、図15に示す通りである。上期の立ち上がりは遅かったが上期後半及び下期半ばに集中的に利用が進み、期末の累積の利用実績は、上期が87.1%、下期が65.2%となった。
なお、政策対応の計算資源は提供可能資源量の枠外として定義されている。
2024年度の政策対応利用課題は、一般利用、産業利用に適用している分野で集計した場合、システム利用実績(資源量)の分野別比率は図16に示す通りである。
2024年度のSociety 5.0推進利用課題は2022年度から継続する課題1件の利用が2024年6月末まで実施され、月別のシステム利用実績の推移は図17に示す通りである。月により利用実績の大小はあるが、期末の累積の利用実績は、100.0%であった。
なお、Society 5.0推進の計算資源は提供可能資源量の枠外として定義されているが、産業界のコンソーシアムによる利用が想定されるため、産業利用の一環として扱われる。
2024年度のSociety 5.0推進利用課題は、一般利用、産業利用に適用している分野に分類した場合、「バイオ・ライフ」に属する課題であった。