5 「富岳」を用いた研究活動等

5-2 その他の研究活動

R-CCSでは、計算機科学と計算科学の連携・融合により先進の科学的成果と技術的ブレークスルーを生み出す国際的な研究拠点の形成を目指して、次のような研究事業にも取り組んだ。

5-2-1 文部科学省「HPCIの運営」(HPCIの運営企画・調整)

2021年度に引き続き拠点間データを二重化することにより、2022年度も年間を通じて東大・R-CCS両拠点間でデータを冗長構成とした運用を実施した。データ二重化運用により、片方の拠点でメンテナンス実施や障害発生のために運用を停止しても、もう一方の拠点を運用することによりサービスを停止することなく連続して稼働することができた。特に2022年度は、利用量の増大によりレプリカ数を4から2に削減し、東大、R-CCSそれぞれレプリカを1つ保持するようにした。また、年間合計7回のメンテナンスを実施し、基本ソフトウェアのバージョンアップ、SINET6の緊急メンテナンス、各拠点の機材メンテナンス、各拠点の停電対応、各拠点のネットワーク停止への対応を行ったが、いずれのメンテナンスも東大、R-CCSで交互に片拠点運用を実施することでサービスを継続した。

具体的には、2022年9月に、東大柏キャンパスの計画停電及び機材メンテナンスのため10日間ほど東大拠点のHPCI共用ストレージ機器を停止せざるをえなかったが、R-CCS設置機器による片拠点運用を実施し、HPCI共用ストレージはその間R-CCS設置機器でサービスを継続した。2022年10月には、R-CCS計画停電のためR-CCS設置機器を停止したが、東大設置機器により片拠点運用を実施することで、HPCI共用ストレージはサービスを継続した。また2023年2月には、東大SINET6回線切り替えが発生したが、事前にマスタメタデータサーバをR-CCSに移動させることにより、HPCI共用ストレージのサービスを継続した。

機能整備では、サービス監視を高度化し、特に運用情報として、課題毎の利用容量・利用ファイル数、保存データの更新時期毎の保存容量・ファイル数、保存データのサイズ毎の容量・ファイル数などを運用関係者に提供できるようになった。その他保存ファイルの多重化状況、ネットワークトラフィック、エラーログなども瞬時に把握できるようになり、HPCI共用ストレージの安定的な運用に貢献している。具体的には、年間475件の障害を迅速に発見し対応する事ができた。障害のほとんどはHDD障害など軽度でユーザー利用に影響を与えないものである。475件のうち、348件はR-CCSで発生した障害であり、72件が東西両拠点で担当した障害である。

5-2-2 計算科学振興財団「研究教育拠点(COE)形成推進事業」

兵庫県、神戸市協調のもとで研究助成事業を受け、2017年度より、防災・減災や創薬などの地域の課題解決等に資する分野における「京」及び「富岳」を活用した最先端の研究を遂行している。また、研究成果の地域への還元を図るための普及啓発活動を通じて、計算科学・計算機科学の研究教育拠点(COE)の形成とその振興を図っている。

2022年度は、Society 5.0社会の実現を見据え、地域の課題解決等に資する研究として、下記の8課題に取り組んだ(課題①は2021年度で終了)。神戸市の政策ニーズを踏まえ新規サブ課題として「将来の暑熱環境の変化シミュレーション」を立ち上げた。また、SPring-8/SACLAの大規模データを活用するためのAIによるデータ圧縮の基盤技術の開発など兵庫県にある大型研究施設の連携を進めた。

①ポスト「京」、ポスト・ポスト「京」をみすえたハードウェア・アルゴリズム・ソフトウェアの総合的研究(2021年度で終了)
②シミュレーションとインフォマティクスの融合による新エネルギー材料設計
③異なる時間スケールを考慮したレジリエント社会形成に資する計算科学研究
④テンソルネットワーク(TN)スキームに基づく異分野融合型計算科学研究
⑤ハイパフォーマンスコンピューティングによる構造生物学の革新
⑥分子シミュレーションに基づくゲノム医療・ゲノム創薬基盤の構築
⑦Society 5.0を担う学際的人材育成のための研究開発
⑧Society 5.0を支える大規模研究施設連携によるビッグデータ収集・解析・利活用基盤の研究開発
⑨「富岳」による社会シミュレーションの研究

5-2-3 その他の受託・助成プロジェクト

2022年度、R-CCSでは、前述の他にも政府系プロジェクト、助成事業等多様な外部資金課題を獲得し、センター内外の研究者・機関と連携し研究を遂行した。

政府系機関に係る受託プロジェクトでは、CREST、さきがけ、SATREPS、共創の場形成支援、ムーンショット型研究開発事業等により、社会課題や政策に係る研究活動に寄与した。

表1 2022年度の外部資金

(千円)

外部資金種類 課題件数
(継続課題・予定課題含)
受託・助成額
(外部機関配分額含)
政府関係受託・JST(CREST、さきがけ、SATREPS、共創の場形成支援、ムーンショット型研究開発事業) 10 154,687
政府関係受託・内閣府 1 19,799
政府関係受託・文科省 6 369,740
政府関係受託・その他
(NEDO、国土交通省等)
8 138,844
研究教育拠点(COE)形成推進事業研究助成金 8 124,600
科研費(補助金) 36 90,791
科研費(基金) 25 42,974
合計 94 941,435