3.3. LLVM¶
LLVMを基盤にもつ、C/C++/Fortran用コンパイラの利用方法を示します。 計算ノード向けバイナリを出力するLLVMはログインノード(Intel)、計算ノードの双方で利用可能です。
3.3.1. コンパイル環境設定¶
LLVMコンパイラは、
ログインノード(クロス環境)では/vol0004/apps/r/OSS_CN/llvm-21.1.0/cross_clangfxにあります。 計算ノード(ネイティブ環境)では/vol0004/apps/r/OSS_CN/llvm-21.1.0/own_clangfxにあります。
(今までのバージョンを利用したい方は、'lvm-v19.1.4' をご利用ください。)
コンパイルを実行する前に以下を実行して利用環境を設定してください。
ログインノード
[_LNIlogin]$ module load LLVM/llvmorg-21.1.0
計算ノード
[_CNlogin]$ module load LLVM/llvmorg-21.1.0
利用できる環境は、以下のとおりです。
ソフトウェア名
言語
バージョン
コマンド
Clang
C
21.1.0
clang
Clang++
C++
21.1.0
clang++
Flang
Fortran
21.1.0
flang
3.3.2. コンパイルコマンド¶
LLVMを使用したC言語プログラムのコンパイル例を示します。 コマンドはログインノード、計算ノード共通です。 翻訳時オプションに関しては、LLVMのClang/Flangに準じます。
(特にflangでは翻訳に時間がかかる場合があります。 計算ノードで実行する際には、下に述べるようにpjsubのオプションでキャッシュ容量を多めに割り当ててください)
【逐次実行】
- ログインノード
[_LNIlogin]$ clang -O3 ソースファイル名
- 計算ノード
[_CNlogin]$ clang -O3 ソースファイル名
【OpenMP】
OpenMP利用には、"-fopenmp"をご使用ください。
- ログインノード
[_LNIlogin]$ clang -O3 -fopenmp ソースファイル名
- 計算ノード
[_CNlogin]$ clang -O3 -fopenmp ソースファイル名
【MPI】
MPIライブラリはmpiclang/mpiclang++/mpiflangコマンドにより利用可能です。
- ログインノード
[_LNIlogin]$ mpiclang -O3 -fopenmp source_file
- 計算ノード
[_CNlogin]$ mpiclang -O3 -fopenmp source_file
参考
上記例は、C++ (mpiclang++), Fortran (mpiflang) の場合も同様の方法となります。
ジョブスクリプトによるコンパイル例 計算ノードにジョブを割り当てる際には、pjsubのオプションに--llio cn-cache-size=1Giを指定してください。 指定しない場合、翻訳時間が長くなる可能性があります。
#!/bin/sh -x #PJM -L "node=1" #PJM -L "rscgrp=small" #PJM -L "elapse=01:00:00" #PJM -x PJM_LLIO_GFSCACHE=/vol0004 #PJM -g groupname #PJM --llio cn-cache-size=1Gi #PJM -s # module purge module load LLVM/llvmorg-21.1.0 mpiclang -o sample1.out sample1.c
3.3.3. 実行方法¶
コンパイルされたプログラムの実行は、ジョブスクリプト、インタラクティブジョブ双方で可能です。
ジョブスクリプト例を示します。 高並列で実行する場合は、性能向上のため、実行ファイルとLLVMライブラリをllio_transferを使い転送してください。
#!/bin/sh -x #PJM -L "node=128" #PJM --mpi "max-proc-per-node=4" #PJM -L "rscgrp=small" #PJM -L "elapse=01:00:00" #PJM -x PJM_LLIO_GFSCACHE=/vol0004 #PJM -g groupname #PJM -s # module purge module load LLVM/llvmorg-21.1.0 llio_transfer `find ${LLVM_BASEDIR}/lib64 -type f -name \*.so\*` llio_transfer `find ${MPI_HOME}/lib64 -type f -name \*.so\*` llio_transfer sample1.out mpiexec ./sample1.out
参考
C++, Fortranプログラムの実行も同様の方法となります。
3.3.4. その他¶
このLLVMで利用できるOpenBLAS, FFTWが用意されています。
こちらのライブラリは他のコンパイラからは使用できません。
OpenBLASの利用方法
- 格納場所は以下です。
ライブラリの分類
インストールディレクトリ
LP64, 逐次
/vol0004/apps/r/OSS_CN/llvm/openblas-seq
LP64, スレッド並列
/vol0004/apps/r/OSS_CN/llvm/openblas-omp
ILP64, 逐次
/vol0004/apps/r/OSS_CN/llvm/openblas-seq-ilp64
ILP64, スレッド並列
/vol0004/apps/r/OSS_CN/llvm/openblas-omp-ilp64
プログラム翻訳方法
OpenBLASを利用するプログラムを翻訳する場合は、富岳LLVMを使用するための環境設定を行った上で、 リンク時のオプションに-lopenblasを追加してください。
またスレッド並列ライブラリを利用する場合は、オプションに-fopenmpを追加してください。
さらに言語に応じて、以下のオプションを追加してください。
C/C++の場合:
-Lオプションおよび-IオプションでOpenBLASをインストールしたディレクトリ(${OPENBLAS_DIR})のライブラリおよびヘッダを指定してください
-lflang_rt.runtimeを指定してください
Fortranの場合:
-LオプションでOpenBLASをインストールしたディレクトリ(${OPENBLAS_DIR})のライブラリを指定してください
プログラム実行方法
OpenBLASを利用するプログラムを実行する場合は、LD_LIBRARY_PATHに${OPENBLAS_DIR}/libを追加してください。
オリジナルOpenBLASからの変更点
オリジナルOpenBLAS 0.3.26に対して、A64FX向けに以下のルーチンをチューニングしています。
DGEMM
SGEMM
FFTWの利用方法
FFTWは/vol0004/apps/r/OSS_CN/llvm/fftw3に格納されています(FFTW_DIR)。
FFTWを利用するを利用するプログラムを翻訳する場合は、富岳LLVMを使用するための環境設定を行った上で、 リンク時のオプションに以下のライブラリを追加してください。
単精度の逐次ライブラリ : -lfftw3f -lm
単精度のスレッド並列ライブラリ : -lfftw3f_omp -lfftw3f -lm
倍精度の逐次ライブラリ : -lfftw3 -lm
倍精度のスレッド並列ライブラリ : -lfftw3_omp -lfftw3 -lm
またスレッド並列ライブラリを利用する場合は、オプションに-fopenmpを追加してください。
さらに言語に応じて、以下のオプションを追加してください。
C/C++の場合:
-Lオプションおよび-IオプションでFFTWをインストールしたディレクトリ(${FFTW_DIR})のライブラリおよびヘッダを指定してください
-lflang_rt.runtimeを指定してください
Fortranの場合:
-LオプションでFFTWをインストールしたディレクトリ(${FFTW_DIR})のライブラリを指定してください
プログラム実行方法
FFTWを利用するプログラムを実行する場合は、LD_LIBRARY_PATHに${FFTW_DIR}/libを追加してください。
オリジナルFFTWからの変更点
各種SIMD命令に対応するためのヘッダファイルをSVE命令に対応
プラン生成と呼ばれる自動チューニング機構で、選択されない処理ルートを除去することで効率化を実施
ラージページ
ラージページを使うことで性能を向上させることができます。「富岳」環境では、翻訳時(リンク時)のオプションに
-L/opt/FJSVxos/mmm/lib64 -lmpg -Wl,-T/opt/FJSVxos/mmm/util/bss-2mb.ldsを
追加することでHPC拡張のラージページ機能を使用することができます。 これは他のライブラリよりも前に指定してください。 ラージページ機能の詳細はマニュアル「ジョブ運用ソフトウェア エンドユーザ向けガイド HPC拡張機能編」を参照ください。
富士通コンパイラ (clangモード) との相違点
富士通コンパイラにはLLVMをベースとしたclangモードがC/C++で提供されています。 しかし、富士通独自に拡張された富士通コンパイラの機能はLLVMでは使用できません。 ここでは、主な相違点を示します。
富士通コンパイラのclangモード独自の環境変数、最適化指示子(pragma)等は、LLVMが提供するClangでは利用できません。
富士通コンパイラのclangモードで指定可能な-K,-ffjで始まる富士通独自オプションは、LLVMが提供するClangでは指定できません。
富士通コンパイラが提供する数学ライブラリ(-SSL2オプション、-lfjlapacksveなど)はLLVMでは使用できません。
LLVMではA64FXプロセッサ固有の機能(セクタキャッシュ、ハードウェアバリアなど)は使用できません。
LLVMで提供するClangで生成されるプログラム命令列と富士通コンパイラのclangモードで生成されるプログラム命令列は異なる場合があるため、同一のプログラムでもプロファイル結果が一致するとは限りません。
注意事項
REAL(KIND=16) および COMPLEX(KIND=16) 型に関する注意点
ログインノード上にあるクロス環境のflangでは、 REAL(KIND=16)およびCOMPLEX(KIND=16)型を使用したFortranプログラムのコンパイル時に、 以下のエラーが発生します。
エラーが発生する翻訳例
flang complex16.f90 error: Semantic errors in complex16.f90 ./complex16.f90:3:3: error: COMPLEX(KIND=16) is not an enabled type for this target complex(kind=16) :: x ^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^flang real16.f90 error: Semantic errors in real16.f90 ./real16.f90:3:3: error: REAL(KIND=16) is not an enabled type for this target real(kind=16) :: x, y, z ^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^
回避方法
この制限はログインノード上にあるクロス環境のflangに特有のものであり、計算ノード上にあるネイティブ環境のflangでは 正常にコンパイルが可能です。 そのため、これらの型を使用する場合は、計算ノードにあるネイティブ環境のflangを用いて コンパイルを行ってください。