研究者に聞いてみよう! 第9回

複合系気候科学研究チーム
西澤 誠也 研究員
研究者に聞いてみよう!
2018年10月掲載
複合系気候科学研究チーム 西澤 誠也 研究員
西澤 誠也 研究員
Seiya Nishizawa
私立明徳義塾高等学校卒業後、1年間の浪人時代をはさんで京都大学に入学。博士課程を修了後、京大、神戸大を経て現在に至る。大学時代はよさこいに没頭した。最近、読書やハイキングを始める。
兵庫県立龍野高等学校の皆さんと西澤研究員。「京」の前で。
私たちが取材しました!
兵庫県立龍野高等学校の皆さん

気象の精度向上へ−−西澤さんの出身は滋賀県大津市。全寮制の中高一貫校で学生時代を過ごし、部活動においては、空手に打ち込んでいました。京都大学大学院で博士号を取得し、その後は京都大学や神戸大学、理研計算科学研究センターなど西日本を拠点に研究活動を行っています。主に気象について研究していて、シミュレーションを用いて集中豪雨・大気乱流・気候変動のメカニズム解明に努めているほか、研究で得られたたくさんのデータを幅広く公開、活用することで、将来的にALL JAPANで防災に取り組めるようにするためのプロジェクトにも参加して研究を進めています。このように、気候科学を軸に多方面で活躍する西澤さんにお話を伺いました。
(兵庫県立龍野高等学校 自然科学部PC班)

コンピュータに興味をもったきっかけは?
小学生の頃は、パソコンが一家に一台あるという状況ではなかったです。友達の家にコンピュータがあったため、よく遊びに行っていました。当時はハードディスクなどがなく、カセットテープにデータを入れ、ロードしてゲームなどをしていました。高校時代は寮にコンピュータルームがあり、詳しい人に教えてもらいながらプログラミングをしたのが始まりです。大学では授業でC言語やコンピュータグラフィックスについて学び、自分で書いたコードが動くことに面白さを感じていました。
「京」のすごさを感じるのはどんなときですか?
便利なものは、使いだすと慣れてしまうのであまり意識しませんが……、「京」が使えなくなると代わりになるものがないので途方に暮れます。たまに「京」もトラブルで止まることがありますが、学会発表の締め切りなど焦っているときにそうなると、普段の「京」のありがたみを感じ、「京」はやっぱりすごいよね、と思います。
研究とはどんなものですか?
僕の考えですが、「これは面白い」というきっかけがあり、次に「なんでそうなるの?」「それを理解するために何が必要か?」と考えて準備する。そして「なるほど」と理解したらそれで終わりではなく、次なる疑問が出てきて「これはどうなっているんだろう」とまた戻る。これを永遠に繰り返すのが研究だと思います。
ポスト「京」の開発について教えてください。
ポスト「京」では、シミュレーションの結果が出る速度を最大で「京」の100倍にしようというのが目標です。「こんなコンピュータにしよう」ということは決まっています。現在の「京」がある場所に設置するので、いったん「京」を撤去してその後ポスト「京」を搬入することになります。正確な日程はまだ決まっていませんが、設置されるのは1年後か2年後くらいでしょうか。
量子コンピュータの技術をポスト「京」に使いますか?
量子コンピュータのような新しい技術が、もう設計や製造が始まっているポスト「京」に導入されることはありません。でも、これから先、さまざまな技術が進歩していき、その時代で最も効率がよい技術として成熟していけば、「ポストポスト京」といった将来のスパコンに導入される可能性は十分にあると思います。
よく使うプログラミング言語は?
現在ではC言語やPythonが一般的に使われていますが、計算科学では昔からFORTRANが用いられています。僕は研究において、FORTRANやRubyを用いてプログラミングをしています。FORTRANは実行速度が速いため、シミュレーションコードを書くために利用しています。コーディングに比較的時間がかかりますが、他人と共有することで何回も利用することができます。一方、Rubyはコードを書くのが簡単なため、試行錯誤が必要で一度限りのコードとなることが多いシミュレーションデータの解析用プログラムに利用しています。
座右の銘は?
座右の銘・・・というよりも、この言葉は大切だなというのは、「少年老い易く学成り難し」です。中学、高校と過ごした寮で夕礼(朝礼の夕方バージョン)があって、そのときにこのフレーズからからはじまる詩吟「偶成」を全員で歌っていたんですよ。今、この言葉は「ほんとだなぁ」と実感しています。ぼーっと過ごしていると時間はあっという間に過ぎていくので、その都度その都度、節目で頑張っていくことが大切だと思います。
趣味は何ですか?
読書や山登りです。今まで趣味のようなものがなかったので最近始めました。本屋さんで手当たり次第に本を買ってきて読んでいます。本を読むことで新しい世界との出会いがあるので、読書は大きな楽しみになっています。山登りは健康のことを考えて始めたものです。来月には、友人と一緒に富士山にも登ってみるつもりです。
インタビューを終えて
「京」に携わる研究者である西澤さんのお話をお聞きする貴重な体験をさせていただき、大変うれしく思っています。毎日確認する気象予報には、西澤さんのような研究者による予測が欠かせないということを改めて実感しました。高度な研究内容を僕たちにも分かるように丁寧にやさしく説明していただき、本当に勉強になりました。僕たちも、さまざまなことに触れ、趣味をもちたいと思いました。インタビュー後には、実際に「京」を見学させていただき、スケールの大きさを体感できました。最後に、西澤さんをはじめ、企画に関わってくださった多くの方に感謝申し上げます。ありがとうございました。
インタビュー風景
この記事は「計算科学の世界」NO.17
に収録されています。
計算科学の世界 VOL.17(PDF:4.12MB)pdf