研究者に聞いてみよう! 第4回

データ同化研究チーム
荒木田 葉月 テクニカルスタッフ
研究者に聞いてみよう!
2016年03月掲載
荒木田 葉月 テクニカルスタッフ
荒木田 葉月 テクニカルスタッフ
Hazuki Arakida
あらきだ・はづき。山口県立宇部高等学校卒業。東京農工大学農学部卒業後、NGOや博物館にて勤務。30代に入り、子育てをしながら徳島大学大学院先端技術科学教育部博士課程修了。趣味はギター。
神戸高校の皆さんと荒木田テクニカルスタッフ
私たちが取材しました!
神戸高校の皆さん

衛星データから森林の増減を予測──荒木田さんはシミュレーションを用いて自然環境の問題に取り組む研究者です。学生時代はフィールド研究、卒業後は日本野鳥の会や、兵庫県立人と自然の博物館で仕事を経験した後、博士号を取得しました。その後、兵庫県立大学や理研で研究を行っています。シミュレーションは、コンピュータが計算を行い、考えられるさまざまな可能性をモデルとして再現できるシステムです。荒木田さんはそのシステムに衛星などの観測データを取り込む「データ同化」という方法を使って、葉の重なり合いや光合成の度合いから森林の増減を予測する研究を進めています。研究者でありお母さんでもある、そんな荒木田さんにお話を伺いました。
(兵庫県立神戸高等学校有志)

高校時代、好きな教科は何でしたか?
やっぱり生物ですね。ほかに数学など理数系科目全般も好きでした。子どものころから自然に関わる職業がいいなと思っていたけれど、特に研究者を目指していたわけではありませんでした。
好きな生物は何ですか?
水辺にすむ鳥です。特にクロツラヘラサギが好きです。私が見た鳥の中で一番衝撃的でした。しゃもじのようなくちばしで餌の魚を探す姿がいいですね。この鳥は朝鮮半島で繁殖しますが、水鳥の多くは北極圏周辺で繁殖しているので、植生の変化など温暖化の影響を受けやすいのです。シミュレーションで、水鳥の繁殖地がどう変化しているのかを明らかにしたいです。
井之上あかりさんが描いたクロツラヘラサギ
主婦であり研究者であることについて、どう思いますか?
子どもがいるからこそ頑張れますし、研究に性別は関係ないと思っています。意識していることとして、家庭の用事と研究をしっかり分けて、できるだけ家に仕事を持ち帰らないようにしています。
研究をしていて、自分が男性だったらよかったなと思うことは?
実力があれば認めてもらえるので、研究者として、自分が男性であったらよかったのにと思ったことはありません。ですが、まだまだ女性研究者は少なく、働きながら子どもを育てられる環境が十分でないために夢を諦めてしまった人はたくさんいると思います。
日ごろ心掛けていることは何ですか?
とても忙しくなって体が疲れ果てたら、ゆっくりする時間をつくるようにしています。パソコンを使う仕事なので、肩や首が凝るんです。時には夫に子どもを預けてマッサージに行くこともあります。倒れてしまうと大変なので、体や心のメンテナンスをすることが重要ですね。
女性研究者にとって育児は大変ですか?
研究者に限らず、子どもを持つ女性が仕事を続けるのはとても大変なことだと思います。子どもを預ける施設がなかなかなく、悩んだこともありました。子どもが病気になっても、私が忙しいときは両親や夫に任せることもありますし、家族のサポートは何より重要だと思います。平日が忙しい分、休日は家族との時間をつくって公園に遊びに行ったりしてゆっくりしています。
高校生の自分に言いたいことは?
私が研究者に興味を持ったのは博物館に就職したときで、大学の学部時代には研究者になりたいとは思っていませんでした。ですので、もっと早く研究者になりたいという気持ちに気付いたらよかったです。
研究者としてのやりがいは?
研究者は、誰もやっていないことを見つけて、それに世界で初めて挑戦する。誰もやっていないことを成し遂げたときに、やりがいを感じます。あと、ほかの研究者が自分の論文を引用してくれたときも、うれしいですね。
インタビューを終えて
今回は家庭を持っている女性の方に取材をしたい、という私たちの希望で、とても貴重な経験ができました。男性研究者が圧倒的に多い中で、育児と研究を両立されている荒木田さんから、総合理学科の私たちにとってためになる話も聞かせていただきました。現在、研究者の職場環境は女性にとって働きやすいものとなってきています。ただ、育児などで研究を断念した女性も少なくありません。今回のインタビューを通して、女性研究者という立場での研究についてあらためて考えることができました。貴重な研究の時間の中、私たちのインタビューのために時間を割いてくださり、ありがとうございました。
インタビュー風景
この記事は「計算科学の世界」NO.12
に収録されています。
計算科学の世界 VOL.12(PDF:7.05MB)pdf