スパコンのことば -その3-
構造物のモデル化

スパコンのことば
2014年03月掲載

ビルや橋などの鉄筋コンクリート構造物は、地震の揺れで力を受けると、亀裂が入ったり、その亀裂が大きくなって壊れたりすることがあります。橋の橋脚では、鉄筋が曲がったり、ふくらんだりすることもあります。これを防ぐには、地震の揺れで構造物のどこにどんな力がかかるかを事前に予測しておく必要があります。この予測は、構造物が物理の法則に従って運動するようすを計算することで行います。計算のために、構造物の形状や材質などの情報を、計算機で処理できるような形にすることがモデル化です。

モデル化には、構造物を連続体と見なして細かいブロックに分ける方法(連続体モデル)や、多数の部材がバネでつながっていると見なす方法(構造モデル)などがあり、目的に応じて使い分けられています。

例えば、ビルの設計では、設計データをもとに連続体モデルをつくります。通常の設計ではビル全体を10万個程度に分けていますが、ブロックを細かくすればするほど精密に計算できます。そこで、HPCI戦略プログラム分野3では「京」の計算能力を活かし、高層ビルを数cm刻みで分け、10億個程度のブロックをつくって揺れを計算しています。このような研究は、構造物の耐震性をよりよくするのに役立ちます。

一方、構造物の特徴を大きくつかむには、構造モデルが向いています。構造モデルでは、ビルを床、壁などの部材に分け、部材間の結合をバネで表します。分野3の都市全体を揺らすシミュレーションでも、ビルをこのような構造モデルで表して計算しています。ビルの形状、部材の重さや部材間をつなぐバネの強さが正確であるほど、より信頼性の高いシミュレーションを行うことができます。そこで、分野3の研究では、平面地図や高さの情報からビルの正確な形状をつくり出す手法を開発するとともに、関係機関からビルの構造や材質に関するデータを得る努力をしています。

連続体モデルと構造モデル。連続体モデルが形状を忠実に表現しているのに対し、構造モデルは単純化されて理解しやすく、接合部分の動きがよくわかる。
連続体モデルと構造モデル。連続体モデルが形状を忠実に表現しているのに対し、構造モデルは単純化されて理解しやすく、接合部分の動きがよくわかる。
連続体モデルと構造モデル
この記事は「計算科学の世界」NO.8
に収録されています。
計算科学の世界 VOL.8(PDF:3.98MB)pdf