理化学研究所 計算科学研究センター

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第5回AICS国際シンポジウム開催報告(2014年12月8日〜9日)

2014年12月8日、9日の二日間にかけて、第5回AICS国際シンポジウムが開催され、およそ130名の方に参加いただきました。

第5回AICS国際シンポジウム

第5回となる本シンポジウムでは、物質科学、粒子計算、生命科学、ものづくり、社会科学等の計算科学分野の著名な研究者の講演や、最近のAICSの研究成果の紹介を行いました。また、今年度のAICSの顕著な成果として、東京工業大学上野氏よりGraph500にて世界1位達成したアルゴリズムの講演、AICS石川チームリーダーよりポスト京コンピュータの開発についての講演を行いました。

各計算科学分野からは以下の講演がありました。

物質科学

Université Pierre et Marie CurieのMichele Casula氏の講演では、超伝導化合物FeSeに対して量子モンテカルロ法による電子状態計算を行い、得られた結晶構造・磁気・超伝導的性質などを従来の密度汎関数法による結果・実験結果と対比した報告がされました。
Max Planck Institute for MathematicsのAlexander Weiss氏の講演では、大きな次元を持つ系のスペクトル・相関関数などを効率的に計算するためのKernel Polynomial法について説明を行い、ランダム系、電子・フォノン系、量子スピン系などに対する応用について解説が行われました。
AICSの中塚研究員の講演では、重い元素を含む分子系を精密に取り扱うための手法、相対論的量子モンテカルロ法について解説し、京コンピュータ上での並列計算結果について報告が行われました。
大阪大学の山口教授の講演では、光合成で中心的な役割を果たす光化学系II、特に酸素発生複合体についての解説を行い、QM/MM等による計算結果とX線自由電子レーザーで得られた最新の結晶構造の対比を行った報告がされました。

粒子計算

Leiden UniversityのSimon Portegies Zwart教授の講演では、N体シミュレーションを元にした、天体の軌道を数値計算するコードの紹介があり、東京大学の室谷助教からはMPSと呼ばれる粒子的流体数値計算コードを用いた、津波シミュレーションの結果についての報告がありました。またAICSの岩澤研究員からは、AICSで開発中の粒子法全般を大規模並列で行うためのフレームワークFDPSの開発状況について報告がありました。

生命科学

HongKong University of Science andTechnologyのXuhui Huang助教が、天河一号を用いたRNA polymerase IIの大規模な分子動力学シミュレーションの成果について紹介しました。次に、Sookmyung Women’s UniversityのSihyun Ham教授が、タンパク質間相互作用における水の役割について、積分方程式理論を使った成果を紹介しました。最後に、AICSの松永研究員が京を用いたマルチコピーシミュレーションの成果について報告しました。

ものづくり

KTH Royal Institute of TechnologyのJohn Hoffman教授の講演では、スウェーデン王立工科大学で開発中の有限要素法(FEM)熱流体解析コードの紹介があり、航空系の大規模解析による検証結果や解適合格子法に伴う負荷分散など、実用系のHPC技術についての実例が紹介されました。
University of DebrecenのFerenc Kun教授からは、ハンガリーデブレツェン大学で開発中の粒子法(DEM)破壊解析コードが紹介され、岩石の破壊試験の再現から大規模計算による人体頭部のダメージ解析への適用可能性について紹介されました。
東京理科大学の河合准教授からは東京大学をはじめとする研究チームで開発中の有限要素構造解析コードの大規模高速化手法についての紹介があり、領域分割手法と細分化されたソースコードの自動生成手法により、高い演算性能が得られた事例が報告されました。
AICSのJansson研究員の講演では、AICSで開発中の階層型直交格子流体解析コードが紹介されました。モダンなコード設計がなされており、工業CADデータを無修正で使えることや化学反応・構造変形などを統一データ構造で取り扱えることのメリットが紹介されました。
マツダ(株)の天野氏の講演では、マツダにおける「京」を使用した大規模最適設計事例の紹介が紹介され、剛性・衝突・軽量化の相反する目的に応じた多目的最適解析を京を用いて実施し、部品共通化や板厚の決定など、設計に有益な情報が得られたとの報告がありました。

社会科学

Aalto UniversityのSanto Fortunato教授からはPhysics of societyに関する招待講演をいただきました。投票に関する分析では、1つのパラメータで政党と候補者の割合についての規模に関する不変性が確認されることを示し、論文の引用/被引用関係に関しても、同様に規模に関する不変性が見られたと報告がありました。
AICSの村瀬研究員からは「弱い紐帯」の性質を持つことで知られるGranovetter型社会ネットワークを形成するモデルを紹介しました。Kumplaらのネットワーク形成のモデルを複数重ねて多層ネットワークを作り,重ね方に位置情報を加味することで,Granovetter型ネットワークの性質を保つネットワークが形成されることが報告されました。
AICSの内種研究員からは、離散事象シミュレーション研究チームで開発を進めている大規模ジョブ実行管理ツールであるOACISが紹介されました。OACISを用いた社会科学の適用例として,神戸市道路ネットワーク上での道路間の交通量に関する相関の分析の例が示されました。

第5回AICS国際シンポジウム2

ポスターセッション会場で行われた懇親会の様子