理化学研究所 計算科学研究センター

メニュー
メニュー
Science 研究成果

「京」が新たな性能指標(HPCG)で世界トップレベルの高性能を達成 ~産業利用など実際のアプリケーションにおける高い性能を証明~(2014年)

2014年10月、理化学研究所は、スーパーコンピュータ「京」(※補足説明1)で、新たに提案されたHPCGベンチマークに取り組み、世界トップレベルの高いスコアを達成しました。
HPCGベンチマークは、産業利用など実際のアプリケーションで良く使われる計算手法である共役勾配法(※補足説明2)の処理速度を評価するものです。これまで用いられてきたLINPACKとは異なる観点で性能を評価する指標で、今後LINPACKと並ぶ新しいベンチマークとして期待されています。
今回測定に使われたのは、「京」が持つ88,128台のノードの内の82,944台で、ベンチマークのスコアは460.754TFLOPS(テラフロップス)でした。この世界トップレベルの高いスコアは、「京」が産業利用など実際のアプリケーションにおいても高い性能を発揮できることを意味します。

HPCGとは

世界で最も高速なコンピュータシステムの上位500位までを定期的にランク付けし、評価するプロジェクトとしてTOP500があります。TOP500は、評価の指標として米国のテネシー大学のジャック・ドンガラ博士らによって開発された連立一次方程式を解くベンチマーク・プログラム:LINPACKを用いています。
1993年に発足したLINPACKを用いたTOP500プロジェクトは、発足して20年以上が経過して、近年、実際のアプリケーションで求められる性能要件との乖離やベンチマークテストにかかる時間の長時間化が指摘されることもありました。そこで、ジャック・ドンガラ博士らにより、産業利用など実際のアプリケーションで良く使われる計算手法である共役勾配法を用いた新たなベンチマーク・プログラム:HPCGが提案されました。2014年6月のISC14で世界の主要なスーパーコンピュータ15システムでの測定結果の発表を経て、今回米国ニューオーリンズで開催されたHPC(ハイパフォーマンス・コンピューティング:高性能計算技術)に関する国際会議「SC14」より正式なランキングが発表されました。
「京」は、TOP500で第4位の性能ですが、下表に示す通り今回のHPCGベンチマークでの数値は1位のスコアにはわずかに及ばない2位であり、TOP500では「京」よりも上位であるTitanのスコアを上回っていることは注目すべき点です。また、理論性能あたりのHPCGスコアが世界トップレベルであることは、「京」が産業利用など実際のアプリケーションを、より効率的に処理できることを示しています。
 今回のHPCGと、先に発表されたLINPACKとGraph500(※補足説明3)の総合的な結果から、「京」の幅広い分野のアプリケーションに対応できる汎用性の高さがあらためて実証されたことになります。

HPCG上位10位(https://software.sandia.gov/hpcg/

2014年10月に公開されたHPCGの上位10位は以下の通りです。

HPCG順位

システム名称

設置場所

ベンダー

国名

HPCG

TFLOPS

LINPACK順位

LINPACK性能比

理論性能比

1

天河2号

広州スパコンセンター

NUDT

中国

    632

1

1.8%

1.1%

2

「京」

理研計算科学研究機構

富士通

日本

    461

4

4.4%

4.1%

3

Titan

オークリッジ研

Cray

    322

2

1.8%

1.2%

4

Mira

アルゴンヌ研

IBM

    167

5

1.9%

1.7%

5

Piz Daint

スイススパコンセンター

Cray

スイス

    105

6

1.7%

1.3%

6

SuperMUC

ライプニッツコンピュータセンター

IBM

    83.3

14

2.9%

2.6%

7

Edison

ローレンス・バークレー研

Cray

    78.6

24

4.8%

3.1%

8

Tsubame2.5

東京工業大学

NEC

日本

       73

15

2.6%

1.3%

9

iDataPlex

マックス・プランク研

IBM

       61

34

4.8%

4.2%

10

Curie thin nodes

GENCI

Bull

       51

33

3.8%

3.1%

 

ジャック・ドンガラ博士からのコメント
『「京」は新しいベンチマーク「HPCG」の性能評価で素晴らしい結果を残し、ランキング2位となりました。この結果から、「京」は、もっとも挑戦的な計算科学の課題も扱うことができる大変バランスの良いアーキテクチャであることがわかります。
すばらしい成績をおさめられ、おめでとうございます。』

 

 

※補足説明

[1] スーパーコンピュータ「京(けい)」
文部科学省が推進する革新的ハイパフォーマンス・コンピューティング・インフラ(HPCI)の構築」プログラムの中核システムとして、理研と富士通が共同で開発を行い、2012年に共用を開始した計算速度10ペタフロップス級のスーパーコンピュータ。「京」は理研の登録商標で、10ペタ(10の16乗)を表す万進法の単位であるとともに、この漢字の本義が大きな門を表すことを踏まえ、「計算科学の新たな門」という期待も込められている。

[2] 共役勾配法(きょうやくこうばいほう)
物理現象をコンピュータでシミュレーションする場合、大規模な連立一次方程式として解くことが多い。連立一次方程式を解く方法として、解を直接求める直接法と、反復計算を行うことで正しい解に収束させて行く反復法がある。共役勾配法は、この反復法の一つであり、前処理を組み合わせることにより、早く正しい解に収束させることができる。コンピュータシミュレーションの世界ではよく使われている。

[3] Graph500
近年活発に行われるようになってきた実社会における複雑な現象の分析では、多くの場合、分析対象は大規模なグラフ(節と枝によるデータ間の関連性を示したもの)として表現され、それに対するコンピュータによる高速な解析が必要とされている。例えば、インターネット上のソーシャルサービスなどでは、「誰が誰とつながっているか」といった関連性のある大量のデータを解析するときにグラフ解析が使われる。また、サイバーセキュリティや金融取引の安全性担保などのためにもグラフ解析が使われている。このような社会的課題に限らず、脳神経科学における神経機能の解析やタンパク質の相互作用分析などの科学分野においてもグラフ解析が用いられ、応用範囲が大きく広がっている。こうしたグラフ解析の性能を競うのが、2010年から開始されたスパコンランキング「Graph500」である。

参考ページ

HPCG(英語)
SC14(英語)